ルヴァン杯、リーグ戦ともに文句なしの滑り出しを見せたサンフレッチェだが、最終的には14勝9分12敗の8位でシーズンを終了した。終盤までACL出場の可能性は残していただけに、内容的にはやや悔やまれるシーズンとなった。コロナ禍で揺れた激動のシーズンを、サンフレッチェOBの吉田安孝氏が総括する。

リーグ開幕戦(鹿島戦)でゴールを決めた森島司選手。さらなる飛躍が期待される選手の一人だ。

◆全員の頑張りでシーズンを乗り切ったというのが一番

 春先は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、リーグ戦の再開すら危ぶまれるような状況でした。選手たちはコンディション調整が本当に難しかったでしょうし、過密日程の中でよく最後までシーズンを完遂したと思います。成績云々の話も当然あるでしょうけど、まずは選手、スタッフ、サポーターを含めた全員の頑張りでシーズンを乗り切ったというのが一番ですよね。

 また超過密日程を乗り切る上で、必然的に若手の出場回数も増えました。もちろんサンフレッチェだけに限った話ではないですが、若手にチャンスが増えたことでチーム力という部分は確実に上がったと思います。そこは来季に向けてのプラス材料になりました。

 とはいえ、チャンスを多くつくりながら最後の部分で決めきれないという課題も、改めて露呈することになりました。終盤戦で8戦負けなしという時期がありましたが、“引き分けてしまった”という試合が多かった感も否めません。内容的に勝てる試合も多かっただけに、「もったいない」というのが正直なところです。

 先制点を奪われると勝ち切れないというのも、サンフレッチェの今季の戦いぶりを象徴するキーワードとなりました。守備は本当に安定していますし、やはり課題は攻撃力ということになりますね。

 現状では外国人選手が得点源になっていますけど、今後は日本人のアタッカーがしっかり点を奪っていくことも重要になってくるでしょう。そういった意味では永井龍や森島司に期待したいですし、将来的にはホーム最終戦で試みた浅野雄也のワントップというのも面白いかもしれないですね。

 逆に2度目の鳥栖戦(○3-0)、川崎戦(●0-2)、11月11日の名古屋戦(○2-0)というのは、サンフレッチェの良さがよく出た試合となりました。城福浩監督がやろうとしている、良い守備からの良い攻撃。11人がしっかり連動して守備を行い、攻撃でも前線の選手だけではなく後ろからしっかりとビルドアップして、すべての選手が鎖でつながったような素晴らしい内容を見せてくれました。結果的に川崎には敗れてしまいましたが、それができたときのサンフレッチェは、やはり強いですよね。