コロナ禍で揺れるなか、J1リーグの2021年シーズンの概要が見え始めてきた。サンフレッチェは2月27日(土)のベガルタ仙台戦(エディオンスタジアム広島)から、シーズンをスタート。現時点では3月7日の第2節(横浜FM・日産スタジアム)までのスケジュールが決定している。

 昨季は文句なしのスタートダッシュを決めながら、長期の中断も影響し、13勝9分12敗の8位でシーズンを終了。巻き返しを図るシーズンを前に、サンフレッチェOBの吉田安孝氏に今季の展望を聞いた。

センターバックの荒木隼人選手を中心に、昨季もチームの持ち味である堅守を維持したサンフレッチェ。

◆今季の課題は、とにかく前線の選手が数字を残すことです

――昨季のチームスローガンである『積攻』が、今季も踏襲される形となりました(『積攻 SEKIKO CONTINUE OUR BELIEF)。吉田さん的にも新しいことにチャレンジするのではなく、昨年まで積み重ねてきたものを継続して伸ばしていく形がベストだと思われますか?

「今季に関しては、もちろんそうですね。そこにサントスとか新加入選手を、どう融合させていくか。チームがやろうとすることを、しっかりキャンプから植え付けてほしいですね。とにかく今季の最大の目標はJ1残留です。勝ち点を積み上げる中で、終盤以降になってそのときに良い順位につけていたら優勝を目指す、という形で良いと思います。本来であれば開幕前の段階から『優勝を目指して』ということを言いたいんですけど、そこはシビアにいきたいと思います。それくらい今季は簡単なシーズンではありません。もちろんネガティブな意味でのJ1残留ではなく、4チーム降格という部分を考えた上での目標です。サッカー専用のスタジアムができる前にJ2降格、ということは絶対に避けなければなりませんからね」

――松本泰志選手、松本大弥選手、野津田岳人選手ら、期待の選手が期限付き移籍したことについては、どういった思いを持たれていますか。

「(福岡からC大阪へというのは)泰志本人の気持ちもあるでしょうし、新たなチームの主力として活躍して、そして川辺みたいにサンフレッチェに帰って来てくれればベストです。かつては川辺も磐田で中心プレーヤーとして活躍した上でサンフレッチェに帰ってきました。復帰1年目は苦しみましたけど、今の川辺があるのは磐田で主力選手としてプレーした自信があるからだと思いますし、泰志にも川辺のような成功モデルになってもらえたらうれしいですよね。大宮アルディージャに移籍した松本大弥や、ヴァンフォーレ甲府に移籍した野津田についても言えることですけど、環境が変わることで輝く選手もいるわけですから、しっかり新天地で頑張って一回りたくましくなってサンフレッチェに戻ってきてほしいと思います」

――いずれにせよ今季も、コロナ禍の中でのシビアなシーズンになりそうです。

「そうですね。それだけに、とにかく序盤は連敗をしないことが重要になります。その上で、最低限でも勝ち点1を積み上げる。それしかありません。でもサンフレッチェの場合は守備が安定しているわけですから、そんなに大崩れすることはないと思います」

――昨季もリーグの中でC大阪と並んで3番目に失点が少ないなど、持ち味の堅守は健在です。

「その上で昨年から、ある程度の戦い方は確立されています。ただ、試合を重ねる中で上手くいかないときに、どれだけ早くベストな状態を取り戻せるか。昨年は逆転勝ちが1試合もなかったですし、先制点を奪われたときのチームの底力、反発力が出てきたら上位に十分食い込めるチームだと思います」

――昨季は超過密日程でしたし、ホーム最終戦で初めて浅野雄也選手を1トップに起用するなど、試合の中でさまざまなことにチャレンジしていた印象もありました。

「可能性が大きな若手選手がたくさんいますし、シーズン通して森島もよくやったと思います。1トップに起用された浅野もそうですけど、とにかく今季は前線で起用された選手が数字を残すこと。それこそ佐藤寿人ではないですけど数字にとことんまでこだわって、味方のシュートにちょっと触れて方向を変えただけでも『俺の得点だ!』というくらいの貪欲な気持ちを前面に出してもいいと思います。そういう気持ちを全員が持ってくれれば、自ずと課題となっている得点力、決定力不足が解消されていくでしょう。いずれにせよ今季もコロナ禍で大変は状況が予想されますが、サポーターの方も健康面に注意しながらサッカーを楽しんでほしいですね」