ペナントレース後半戦が始まり、苦しい戦いが続くカープ。チームが流れに乗るために必要なことは何か。現在3位のヤクルトとの対戦から見えてきたポイントを、カープOBの笘篠賢治氏に聞いた。

復調が待たれる鈴木誠也選手。

◆佐々岡監督の“采配”がもたらした逆転勝利

 8月14日の阪神戦から19日の中日戦まで34イニング連続無得点を記録するなど打撃陣が苦しみ、チームはまたしても最下位に。森下暢仁や玉村昇悟といった若い投手たちがゲームを作ってくれていただけに、打線の援護が少ないのは見ていて辛いところです。

 苦しい戦いが続いていますが、そんな中で、良かった試合を挙げるなら20日のヤクルト戦です。4点を追う6回裏、先頭の菊池涼介の本塁打から始まった逆転劇は、佐々岡監督の“采配”により引き起こされたものだと思います。

 このイニングの攻撃を振り返ってみましょう。菊池の本塁打のあと、中村奨成、野間峻祥の連続安打で無死一、二塁。この場面で、長野久義にはそのまま打たせて、結果的にはショートの悪送球の間に1点を返します。続く小園海斗、鈴木誠也の連続タイムリーで同点として、なおも無死一、二塁のチャンス。ここで坂倉将吾には、きっちりとバントで送らせます。そして、代打に松山竜平を起用し、犠牲フライで勝ち越しに成功しました。

 これが“采配”だと思います。これまでは、多少選手任せな感じもしていましたが、そうではなく、監督がこうすると決めて、それがハマって勝った試合だと感じました。

 ただ、ひとつだけ気になったのが、長野に打席が回ってきた場面。打席に入る前に長野がサインを確認していたんですよね。「バントじゃなくていいですか?打っていいですか?」という振る舞いにも見えただけに、迷うことなく打席に立てていたら、もっと良かったかもしれません。

 今の野球は、二番打者をどう機能させるかがキーポイントとなってきます。ヤクルト打線を見ると、山田哲人や村上宗隆といった一発のある打者がクリーンアップに並び、外国人選手も上手く機能していますが、二番に青木宣親がいるというのが得点力アップにつながっているように感じます。

 カープは、試合ごとに、菊池、長野、西川龍馬などを二番に起用していますが、そのあたりが上手く機能するかどうかが今後のポイントになってくると思います。あとは四番の鈴木ですね。今は鈴木頼みの打線になっているので、どうしても鈴木の打撃成績が、試合結果に影響を及ぼしてしまいます。鈴木の調子は決して悪いわけではなく、ほんの少しのズレを修正できるどうかだと思います。五輪の疲れもあると思うので、復調を待ちたいですね。

 最後にひとつ。21日のヤクルト戦は負けてしまいましたが、田中広輔が光っていました。雨で中断を挟んでの長い試合でしたが、9回に長野が併殺打に倒れたあとも、そこですんなり終わらせず、田中がしぶとくヒットを放ちました。その日は解説をしていたのですが、必死にしがみつこうとしている姿が印象に残っています。現状は途中出場が多いですが、スタメンで見てみたい選手の一人です。