直球勝負で3連覇中のブルペンを支え続けた一岡竜司が、昨季は思わぬ失速を強いられた。コンディション不良のため7月から二軍調整を余儀なくされると、その後も状態は上向かず登板数はわずか33試合にとどまった。想定外の事態に見舞われるなか、酸いも甘いも味わったブルペンエースは再起へ強い思いを胸に、オープン戦、練習試合と開幕に向けて順調に調整を続けていた。

不動のリリーフエースとして期待がかかる一岡竜司投手。

 本来であれば“勝利の方程式”の一角として連日、熱闘を繰り広げているはずだった。ところが現段階も新型コロナウイルス感染拡大の影響で、いまだ開幕が見えない状況が続いている。好調をキープしていた選手にとっては、先の見えない空白期間は明らかにマイナスだ。復調気配を見せていた一岡も、この異常事態から少なからず影響を受けている。

「オープン戦序盤まではかなり状態も良かったんですが、練習試合では若干調子が落ちていました。その要因は技術的な部分もありますけど、やっぱり一番は本来あるはずのファンのみなさんの声援がないことが大きいです。僕らのような投手にとって1点差のピンチの場面で抑えたりするのが最大の見せ場だと思うんですが、そこで抑えても盛り上がりがないとアドレナリンも出ません。無観客でやっていた時期は打たれて気持ちが冷めて、抑えてもホッとするだけの繰り返しだったので、気持ち的にもギアの上げ方が分からないまま進んでいました」

 普段と違う状況での登板による微妙な気持ちの揺れは球に乗り移り、本来の投球とは違う方向に進んでいる感覚もあった。本来、一岡は140キロ台前半でも空振りが取れるスタイルを理想としている。しかしながら、気づかぬうちに力に頼った投球スタイルになっていた。