全世界を襲った新型コロナウイルスによる猛威は、プロ野球界およびカープにも大きな影響を及ぼした。収束の出口すら見当たらない状況の中、球界関係者、そしてプロ野球ファンは今なお我慢の時を過ごす。開幕延期という異常事態を受け、スポーツジャーナリスト・二宮清純氏がここまでの球界の流れを振り返る。

 

未だ出口が見えないトンネル、1日も早い球春到来が望まれる

 新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響を受け、プロ野球は未だに開幕できない状況が続いている。
 4月3日、NPBは12球団代表者会議を開き、目指していた4月24日開幕の再延期を正式決定した。

 「この時点で開幕日を設定するのは困難。推移を見極めながら、4月下旬から5月上旬に開幕日程を決められないかと思っている。143試合の予定をある程度減らすことも検討せざるを得ない」(斉藤惇コミッショナー)

 4月4日付のスポニチ紙面には〈交流戦18試合中止濃厚〉との見出しが躍っていた。
 斉藤コミッショナーは「無観客も考慮の一つにあると申しておきたい」と語ったが、経営者にすれば「できれば避けたい」(在京球団幹部)というのが本音だろう。
 というのも「無観客」は球団経営の屋台骨を揺るがしかねないからだ。
 たとえばカープを例にとろう。決算公告によると18年の売上高は189億4230万円。球界再編騒動の前年、03年12月期の売上高が65億4300万円だったことを考えれば、実に3倍近い数字である。

 なぜ、これほど売上を伸ばしたのか。端的に言えば、入場者数の増加である。03年に94.6万人だった観客は18年には223.2万人まで増えているのだ。
 球場に人が集まればグッズ収入のみならず飲食に関する収入も増える。それが売上高を押し上げたのである。
 かつてカープは巨人戦を中心とする放映権が売上の柱だったが、現在はスタジアムを中心としたファシリティ・ビジネスに移行している。もちろん、程度の差はあれ、これは他球団も同様だ。
 2月26日に公式戦を中断したJ1リーグも、5月9日の再開を断念し、『無期限延期』の様相を呈している。

 医師たちからなる専門家チームはNPBとJリーグの対策連絡会議で『2大プロスポーツの社会的責任』に言及したと言われる。事実上の自粛要請だ。ファンに感動を与える巨大な装置であるスタジアムが「感染拡大の温床になりかねない」との指摘は、大いなる皮肉である。