カープの鈴木誠也(27)がポスティングシステムでのメジャー挑戦を表明した。6年連続打率3割・25本以上を記録したNPB屈指のスラッガーを巡って、メジャー複数球団による争奪戦が予想される。

プロ3年目、2015年当時の鈴木誠也選手。この年、97試合に出場し、一軍に定着した。

 ここでは、日本を代表する打者へ成長するまでの鈴木のプロ9年間の軌跡を辿る。今回はプロ3年目の2015年、初の開幕スタメンを勝ち取ったシーズンの夏に行った独占インタビューを紹介する。鈴木の成長の陰には、偉大な先輩である、黒田博樹や新井貴浩の存在があった。

◆パ・リーグの打者を見たことがヒントになった

──今季はシーズン前から外野レギュラー争いが注目されるなか、初の開幕スタメンを勝ち取りました。

「特にやらないといけないという気負いもなかったですね。僕は若いですし、とにかく勢いをつけることができたら良いなと思って試合に臨みました。でも、その気持ちが空回りして肝心の打撃で結果を残すことができなかったですね」

─シーズン序盤は、やはり打撃の状態も思わしくなかったのでしょうか?

「状態は良くなかったですね。あのときは上半身ばかりに頼る打撃になってしまって、打ちたがっていたと思います。それで変化球を当てにいってしまったり、変化球を投げられて頭にそれを入れていると真っすぐで空振りしてしまったり……、とにかく悪循環にハマっていたように思います」

─そんな中、4月19日の中日戦(マツダスタジアム)では野間峻祥選手がプロ初本塁打を放った直後に今季初本塁打を放ち、ベンチでは野間選手と抱き合って喜んでいました。あの時はどのような心境だったのでしょうか?

「野間さんが勝手に抱きついてきただけで、僕からではないです(笑)。あの時期、僕は試合になかなか出られなくなっていて、野間さんのスタメンが続いているときで悔しさを持っていました。あの試合では、野間さんが左投手からホームランを打ったこともあって、『自分の出番がまたなくなってきてしまうかも……』という思いもあって、『絶対に打たなきゃいけない』という強い気持ちで打席に入って打ったことが良い結果につながりました」

─交流戦に入って出番が増え、8試合連続安打をマークするなど鈴木選手の調子が上がってきたように感じました。何かきっかけがあったのでしょうか?

「交流戦でパ・リーグの打者を見ていると、思い切り振ってくるし、恐いなと感じました。それを見て『こういう打者になりたい』と思ったんです。そこから自分の中で感覚も良くなっていったように思います。パ・リーグの打者を生で見ることができたのは僕にとって大きかったですね」

─強く振るという感覚は、昨季にはなかったものですか?

「長く一軍にいて、それなりに打てるときもある中で、『何か違うな』とか『単打ばかりはいらないな』という感覚があったんです。塁に出ることも大事ですが、僕は長打も求められているし、物足りないと思っていた部分はありました。そんなときにパ・リーグと試合をしていろんな選手を見て、こういう方が良いんだなと思うようになりました」