◆コロナ禍で深刻な子どもの貧困

 長引くコロナ禍により、さまざまな社会課題が浮き彫りになっています。その一つに『子どもの貧困』があります。厚労省によると、日本の17歳以下の子どものうち約13.5(7人に1人)が相対的貧困(国や地域の水準で大多数よりも経済的に困難な状態)にあるそうです(2019年データ)。コロナ禍で多くの生活困窮世帯で所得が減少していることを考えると、子どもの貧困はさらに悪化の傾向にあることが容易に想像できます。

 子どもの貧困において避けられないのが『教育格差』です。その格差は学問の分野だけにとどまらず、スポーツ、芸術、音楽、語学など、さまざまな学校外教育の場で生じています。経済的な事情を理由に豊かな教育を受けられないことが大人になってからの経済的貧困にもつながり、さらに、その子どもにまで貧困が継承される“負の連鎖”が生まれてしまうのです。若者が将来に希望を持つことが難しくなり『親ガチャ』という言葉が話題になったことも、こういった社会背景が影響しているのかもしれません。

 その負の連鎖を断ち切るための活動を行う団体があります。公益社団法人『チャンス・フォー・チルドレン(CFC)』です。子どもたちの教育格差を少しでも減らすため、CFCでは学校外教育の場で使える『スタディクーポン』を発行しています。子ども達はCFCと提携する学習塾やスクールの中から自分に合ったものを選択し、クーポンを使って学習・文化・スポーツなど、さまざまな教育プログラムを無償で受けることができます。このクーポンにかかる費用の多くが、民間の寄付によって捻出されています。実はプロ野球にも「この活動を支援したい」と手を挙げた選手がいました。楽天の則本昂大投手です。

 則本投手は2019年にCFCのスタディクーポンへの寄付を開始しました。初年度は怪我で戦線離脱したため背番号にちなんで140万円を、2020年からは公式戦で1イニング投げるごとに一万円を寄付しています。(後編に続く)

 

岡田真理(おかだ・まり)
フリーライターとしてプロ野球選手のインタビューやスポーツコラムを執筆する傍ら、BLF代表として選手参加のチャリティーイベントやひとり親家庭の球児支援を実施している。著書に「野球で、人を救おう」(角川書店)。