2022年の幕が上がった。昨年はカープ、サンフレッチェ共に、思うような結果を残せなかったが、若手が台頭するなど、未来への希望を抱かせてくれる戦いを見せてくれた。また、東京五輪が開催されるなど、スポーツがおおいに盛り上がった一年になったと言えるだろう。

 広島アスリートマガジンWEBでは、これまでカープやサンフレッチェをはじめ、広島のスポーツの魅力を伝えてきた。そこで、昨年特に反響の多かった記事を振り返り、2022年のスタートを切る。

 ここでは、時代を彩ったカープ選手の足跡を背番号と共に振り返る。今回は、球団史に燦然と輝く二ケタ番号「51」を取り上げる。(2021年3月5日掲載)

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入団当初から高い評価を受けていた鈴木誠也。

◆前田智徳の前は捕手登録の江藤智

 今回は前田智徳も背負った背番号『51』のお話……デジャヴではないのでご安心を。前回の『31』に続いて、前田が『1』の前につけた背番号を取り上げる。

 前回も書いたように、1989年ドラフト4位で広島に入団した前田は背番号『51』でキャリアをスタートした。高卒ながら1年目からスタメン出場を経験し、翌1991年は1番センターで開幕スタメンを勝ち取った。

 後にカープを引っ張る実力は早くから発揮された。2年目のこの年、プロ第1号を先頭打者本塁打で飾り、129試合に出場するなどレギュラーに定着。外野手としては史上最年少でゴールデン・グラブ賞を受賞した。この年限りで背番号は『31』に変更されたが、2013年シーズン後に引退するまでに2000安打達成、通算打率が3割超えと、天才的なバットコントロールで低迷期のカープを支えた。

 前田が入団する前年に『51』をつけていたのが、江藤智だ。といっても1988年にドラフト5位指名を受けて入団し『51』を与えられるも、わずか1年で『33』に変更。なお内野手のイメージが強い江藤だが、1991年までは捕手で登録されており、1年だけ『51』をつけた1989年も捕手時代だ。1993年から4番に定着すると、1993年、1995年に本塁打王。1995年に打点王。ベストナイン7回など、球団史に残るスラッガーとして活躍した。

 これまで最も長くこの番号とともに過ごしたのは外野手の末永真史で、1999年のドラフト4位入団の彼は2000年のルーキーイヤーからユニホームを脱ぐまで、13シーズンにわたって『51』ひと筋だった。ただし、打撃面の評価が高く早くから将来を嘱望されていたものの、度重なるケガも相まって実力通りの活躍を見せることができなかったのは残念。キャリア後半は丸佳浩らの台頭もあり出場が限られ、2012年限りで戦力外通告を受けた。現在はカープの九州地区担当スカウトを務めている。

◆数奇な運命を辿る背番号『51』

 何となくポジションが定着していく背番号も多くあるが、『51』に関して言えばそうなってはいない。1973年には別当薫監督もつけており、コーチ以外全てのポジションの選手が並んでいる。2012年のドラフト2位で入団し、末永から『51』を引き継いだ鈴木誠也に至っては、3年目の2015年シーズンより内野手から外野手に転向しても背番号は変更しなかった。

 2013年、1999年の東出輝裕以来となる高卒新人野手で一軍昇格を果たした鈴木は、同年に初安打、初打点も記録。前田智徳引退試合では1番、ライトでスタメン出場を果たした。大ブレイクしたのは2016年で、交流戦のオリックス戦で2試合連続サヨナラ本塁打、3戦目も決勝本塁打を放つ大活躍。緒方孝市監督が発した「神ってる」は、その年の流行語大賞にも選ばれた。

 翌2017年シーズンは終盤に右脛骨内果を剥離骨折し戦線離脱を余儀なくされたものの、2018年には開幕から復活し、中心選手として球団史上初となるリーグ3連覇を成し遂げた。日本を代表する4番に成長した鈴木は、2019年から前田智徳の引退以来、空き番号となっていた背番号「1」を継承。前田と同じ背番号『51』でスタートした鈴木が『1』を引き継ぐまでに成長したことには、数奇な流れが感じられる。

 空位となった『51』を現在背負っているのが小園海斗だ。報徳学園高時代は2年連続でU-18日本代表にも選出され、ドラフトでは根尾昂(大阪桐蔭高)と並ぶ4球団からの指名を受けた。結果、ソフトバンク、オリックス、DeNAとの抽選を制したカープが交渉権を獲得。走攻守3拍子そろったゴールデンルーキーとしての期待も高く、不振の田中広輔に代わり1年目からショートに定着した。

 ルーキーイヤーは58試合に出場し、4本塁打で球団高卒新人野手の本塁打記録を塗り替える活躍を見せた。前田、鈴木の活躍により“出世番号”となった『51』を背負うだけに、小園にかかる期待は大きい。

【背番号『51』を背負った主なカープ選手】
江藤智(捕手/1989年)
前田智徳(外野手/1990年-1991年)
末永真史(外野手/2000年-2012年)
鈴木誠也(内野手/2013年-2018年)
小園海斗(内野手/2019年)
※初めて背番号を付けたシーズンのポジションを表記。