『2022明治安田生命J1リーグ』開幕を記念して、本誌初となる対談が実現。サンフレOBの吉田安孝さんと佐藤寿人さんが新生サンフレッチェについて大激論を交わした。編集部が進行役を担う予定も、お二人の久々の再会から盛り上がり、いつの間にか吉田さんが聞き手役に。ストライカー論、サンフレ期待の若手選手、そして新スタジアムについて、1時間じっくりと語り合ってもらった。(全5回のうち5回目・取材は1月上旬)

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今季は新チームとしてどんな戦いをみせてくれるか、期待が膨らむ。

◆ゴールにつながるパスを出せる選手はサンフレッチェにいる。ただ・・

吉田:寿人は現役時代、ストライカーとして、得点につなげるための動きに、試合中何度もトライしていたと思うんだけど、1本のゴールを決めるために、90分間で何回くらいそういうチャレンジをしていたの?

佐藤:20回や30回……もっとかもしれません。ゴールを決めるためには絶対に必要な取り組みだと思っています。ただ、試合中は思った通りのパスはこないんですよね。それでも1本パスが通ってゴールにつながれば良いという世界なので。あとは、どれだけ味方に、パスを出す決断をさせるかですね。

吉田:なるほど〝決断をさせる〟か。

佐藤:ゴールにつながるパスを出せる選手はサンフレッチェにいると思っています。ただ、FWがパスの出し手にトライさせる動きができているかというと、まだまだ物足りないように感じます。予想通りの動きをする選手が多いですから。〝あ、この場面でこんな動きをするんだ〟〝このタイミングで走ってくるんだ〟という、相手の守備陣のイメージを上回る動きをして、相手が想定できていないシーンをもっとつくっていかないとゴールを決めるのは難しいと思いますね。

吉田:そういう点では現役時代の寿人は、日々の練習からしつこいくらいに周りのみんなに厳しく要求していたよね。

佐藤:うるさかったと思いますよ(苦笑)。ただ僕は〝言わないとボールがもらえない〟〝自分の仕事ができない〟と思っていたので、プロのストライカーとして求められている結果を出すために、言うべきことは言ってきたつもりです。繰り返しになりますが、重要なのは、いかに味方にパスを出す決断をさせるかということ。僕にパスを出すということは味方もリスクを負わなければいけないので、味方に信頼してもらえるように、とにかく結果にこだわってプレーしてきました。

吉田:味方のためにも自分のためにも、普段の練習からそういった積み上げをしていくことが重要だというわけね。

佐藤:そういう意味では、トシ(青山敏弘)はたくさんリスクを背負ってくれました。その積み重ねが結果的に、今の彼のストロングポイントの一つになっていると思いますね。

吉田:今のサンフレッチェの前線の選手も、まずはパスが出てくるような取り組みを、もっと高い意識でしないといけないね。

佐藤:そうですね。出し手となるトシや晃誠のような経験豊富な選手が、もっともっとストライカーを育てるような形になっていけば良いなと思いますね。

吉田:ベテランは若手が育つように仕向けていくことも大事だよね。

佐藤:新しいチームに生まれ変わろうとする今季は、右肩上がりにチームの力を上げていけるチャンスでもありますから。

吉田:まずはチームとして、練習から積み上げていくという作業をしっかりとやっていってほしいね。

佐藤:そうですね。勝つことでサンフレッチェを知ってもらえるでしょうし、勝つことでもっともっとサッカーが盛り上がっていくはずです。そういった状況で、新スタジアムの完成(2024年予定)を迎えることができたら最高でしょうね。

吉田:さすが寿人(驚)。実は今回の対談の締め括りに新スタジアムの話をしたいと思っていたんだよ(笑)。広島の中心に誕生する予定のサッカー専用スタジアム。現役時代からその誕生を願ってきた寿人だけに、新スタジアムへの想いは強いんじゃない?

佐藤:もちろんです。現役の頃、新スタジアム建設の署名活動にも参加しましたが、正直なところ、すぐに実現するとは思っていませんでした。ただ根底にあったのは〝未来のために〟という思いです。いろんな方々の力のおかげで、今サンフレッチェにいる選手たち、これからサンフレッチェでプレーする選手たち、広島でサッカーをやっている子どもたちが新スタジアムでプレーする未来が実現できそうです。どんな形であれ、その瞬間、その光景を見ることができそうなのは素直にうれしいですね。

吉田:もしかすると形にならない可能性も少なからずあったわけだしね。それが実現に向けて着々と進んでいるのは、広島のサッカーに携わってきた者として感慨深いよね。

佐藤:完成したあとも大事だと思います。どんなビジョンで〝その先を発展させていくか〟。自分自身が、そこにどれだけ携われるかは分かりませんが、携わるための準備や勉強は続けていきたいと思っています。

吉田:新スタジアムを盛り上げるためにも、2024年シーズンは、なんとしてでも絶対にJ1で迎えないといけない。

佐藤:それはもう最低限ですね。そのためにも、今年と来年の2年間はものすごく大切な年になってくると思います。J1で戦い続け、優勝争いもして、広島の街がサッカーで盛り上がる状況で、待ち焦がれた新スタジアムのオープンを迎えたいですね。

吉田:だからこそ、広島アスリートマガジンさんには、もっともっとサンフレッチェの誌面を増やしてもらいたい(笑)。

佐藤:数年前まで広島アスリートマガジンの裏表紙はサンフレッチェだったんですよね。本屋に行って表紙をひっくり返して、裏表紙が上になるようにしていたのが懐かしいです(笑)。

吉田:小さなことだけど、大事なのはそういうことの積み重ねなんだよね。(編集部に向かって)寿人も頑張ってますよ!

佐藤:練習と同じように、一つひとつの積み重ねです(笑)。サッカーを、そして広島を盛り上げていくためにも、今年はサンフレッチェの記事をもっと増やしてほしい!

吉田:良いニュースを、サンフレッチェにはたくさん届けてもらいたいね。

佐藤:そうですね。一番思い入れのあるチームであり、街でもありますから楽しみに見守っていきたいと思います。

対談はZOOMで実施。画面を通してサンフレッチェ愛に溢れたやりとりが展開された。

◆吉田安孝(よしだ やすたか)
1966年11月22日生。広島県出身。元サンフレッチェDF。現在は広島テレビ「進め!スポーツ元気丸」などのサッカーコメンテーターとして活躍中。また広島アスリートマガジンで、サンフレッチェへの愛情と情熱をぶつける『吉田安孝の紫風堂々』を連載中。

◆佐藤寿人(さとう ひさと)
1982年3月12日生。埼玉県出身。元サンフレッチェFW。現在は指導者・解説者として活動中。広島アスリートマガジンで、FWとして数々の記録を残したサンフレッチェでの現役生活にフォーカスを当てた『広島と共に戦った12年間』を連載。