2021年のシーズン終了後に残ったのは、打率1割台、0本塁打という厳しい現実だった。しかし、幾度も壁を乗り越えてきた男は、胸の内で捲土重来を期している。プロ13年目、悔しさを力に変えて再出発を切った背番号7が胸に秘めた逆襲への思いに迫る。
※取材は5月上旬

鈴木誠也が抜けた影響もあり今季のチーム本塁打数はリーグ最少(6月23日現在)。長打は試合の流れを一気に変える魅力があるだけに、一発の魅力を持つ堂林にかかる期待は大きい。

◆〝ここでチャンスをつかみとる〟強い決意で挑んだ1番でのスタメン

─4月23日のDeNA戦(マツダスタジアム)で今季初めて1番打者に抜擢されると、それ以降、1番でスタメン起用される試合が増えています。1番打者としてどんなことを心がけていますか?

「1番を打つことに特別な意識はありませんが、試合に挑むうえで大切にしているのは、1打席1打席を大事にして、とにかく自分の持ち味をしっかりと発揮することです。あと、僕は球を見定めていくタイプの打者ではないと思っているので、打順がどこであろうと思い切りの良さは忘れないように心がけています。初球から甘い球がきたら、しっかり振れる準備をして打席に入っています」

─4月23日から5月6日にかけて12試合連続安打を記録するなど、しっかりとバットが振れている印象を受けます。今シーズンは良い感覚で打席に立つことができているのではないですか?

「今季は練習から、自分のイメージ通りに打てている感覚があります。なので変に気負うことなく、練習と同じような気持ちで打席に立つようにしています」

─2020年以来、約2年ぶりに本塁打も打たれました(4月23日・DeNA戦)。マツダスタジアムのバックスクリーン横に飛び込む滞空時間の長い当たりでしたが、手応えはいかがでしたか?

「あの打席は、しっかりとバットで捉えることができた感触があったので、打った瞬間、入るだろうなと思いました。迷いなく振り切り、センター方向に理想に近い打球を打ち返すことができましたし、何よりもチームの勝利につながる一打になったのがうれしかったですね」

─勝利を呼び込む一打だと、4月29日の中日戦(バンテリンドーム)で、高校(中京大中京)の後輩にあたるプロ2年目の髙橋宏斗投手から放った2本目のアーチも印象深いです。この試合は、堂林選手の本塁打による1点を同学年の大瀬良大地投手が完封で守り切り勝利。髙橋投手の力強いストレートを完璧に跳ね返した本塁打でした。

「あの場面は3ボール1ストライクと打者有利のカウントだったこともあり、ストレート一本に絞り待っていました。しっかりと捉えることができてよかったです」

─今季1本目と2本目、どちらも会心の打球だったように思いますが、手応えがあったのはどちらの本塁打ですか?

「そうですね……手応えや内容を含めて、マツダスタジアムで打った1本目のほうが印象に残っています」

─昨季は一軍でなかなか結果を残すことができませんでしたが、今季はここまで順調に結果を残されています。その要因はどこにあると思われていますか?

「開幕直後は、試合に出たり出なかったりの日々が続いていましたが、準備だけはしっかりするように心がけていました。それが大きいのかなと思っています」

─シーズン序盤は、相手投手との相性によってスタメン起用されていました。

「そうですね。相手の先発を見て、この日はスタメンかなと予想しながらやっていました。ただ、準備はしっかりして試合に臨めていたので、スタメン出場した試合では安打を放つことができました」

─1番で先発する4月23日の試合まで、5試合にスタメン起用されていますが、5試合全てで出塁されています。

「その結果があったので、1番で起用してもらえたのではないかと思います。なので1番で起用された時、自分の中で〝ここで(スタメンを)つかみとりたい〟という気持ちがありました。とにかく必死に結果を求めにいきましたし、結果が続いたからこそ、以降もスタメンで使ってもらえたと思います。ただ、年齢も年齢だけにシーズンを通して結果を残さないといけません。まだ前半戦ですから……まだまだこれからです」(後編に続く)