プロ野球選手が「脂が乗った」時期になるのは、やはりアラサーから。中国の古典医学書『黄帝内経』では男性の肉体のピークは32歳と言われ、野球は経験がモノを言うスポーツでもある。優勝に向けた熾烈な戦い、ここぞの大一番でチームを支えてほしいアラサー世代の戦士たちにエールを贈る。

今季、13年目のシーズンを迎えた堂林翔太(今季の春季キャンプで撮影)

◆若手に負けていられない。中堅勢が放つ輝きを見たい  

 森下暢仁、栗林良吏、坂倉将吾、小園海斗、遠藤淳志――。20代前半のフレッシュな面々が次々と頭角を現しているカープ。

 期待の若手が躍動し、世代交代が着実に進んでいると言えば聞こえはいいが、チーム力を高めていくためには、中堅を担うアラサー世代も負けてはいられない。シーズン後半戦、その先のポストシーズンを見据えると、プロでの栄光と葛藤を知る経験値の高い彼らの活躍も、優勝への必須条件と言えるだろう。

 逆襲を担うアラサー世代の筆頭格は30歳・堂林翔太。2020年には111試合に出場し、打率.279、14本塁打、58打点、17盗塁を記録したが、昨季は70試合で打率.190、0本塁打と失速。しかし、巻き返しに懸ける今季は、打線改変後の4月23日からトップバッターを担うことが増えた。今後はルーキーの中村健人、末包昇大とのスタメン争いが展開されそうだが、思い切りの良い打撃と走塁が魅力の「攻撃型1番打者」を任せられるのは、やはり堂林だろう。

 野手キャプテンを務める29歳・野間峻祥にも期待したい。今季はオープン戦で結果を残せなかったことが影響し、一軍での出番に恵まれていないが、二軍では高い打率をキープ。2018年のCS、日本シリーズでは全試合スタメンを経験している実績ある戦力。ルーキーに疲れが見えてくるであろう中盤戦以降、〝頼りになるのは、やっぱり野間だった〟と思わせるような活躍を期待したい。

 アラサー世代で、今季、存在感を増しているのは31歳の上本崇司。開幕戦ではセンターを守ったが、サード、セカンドのスタメンもこなすスーパーユーティリティ。昨季までは途中出場が中心だったが、まとまった打席数を得た今季は、持ち前の「しぶとさ」で勝利に貢献。170センチ73キロと小柄な体格ながら、与えられた役割をしっかりとこなす仕事人として、オリックス・福田周平のように相手にとってはいやらしい小兵になっている。「1番・上本」もぜひ見てみたいラインアップだ。

 新外国人のマクブルームも4月に30歳の節目を迎えたアラサー組。アメリカ時代はマイナー通算134本塁打の実績を誇るもメジャーでは通算66試合の出場に留まり、異国での成功を目指して来日した。ここまで本塁打は少ないものの、自身のスイングを崩さず、球を見極める姿勢はこれまでの経験の賜物だろう。ただ力任せなだけではなく、状況によっては進塁打を打つスマートな打撃は、カープが目指す野球にハマっていると言える。(後編に続く)