6月19日に開幕した今季プロ野球は、120試合制で戦うことになる。誰もが経験したことのないシーズンを、どのように乗り切るべきか? 新井貴浩氏が独自の考えを語る。

今季、初采配となる佐々岡真司監督。異例のシーズンをどう戦い切るか、注目が集まる。

 ようやく開幕を迎えたカープですが、一度は3月開幕に向けて気持ちも体もピークに持っていった状態から、練習制限がある2カ月間でした。これは投手、野手と違いはあれど、それぞれ調整は難しいものだったでしょう。一軍枠、レギュラーを狙う選手らは開幕まで競争の期間が長くなったとはいえ、調整が難しいとは言っていられない立場でもあります。逆に主力レギュラー、先発ローテーション投手たちは、基本的には開幕に照準を合わせて、キャンプから逆算して調整をしています。そもそも、コロナ禍の影響でオープン戦、練習試合など実戦の数自体が減っているだけに、例年と同じ状態で開幕という訳にはいかないかもしれません。

 そして首脳陣も見極めに苦労した部分があったかもしれません。投手陣で言えば若手は実戦登板機会を与えられながら適正を判断されます。またある程度ポジションが決まっている投手は、開幕が近づくにつれて連投などを試していかないといけません。しかし今季は練習、実戦での調整も含めて時間があるようでない状況でした。例年よりも難しい調整を強いられ、開幕を迎えているかもしれないですね。

 開幕前、カープは対外試合で13連敗を喫するなど勝てない時期がありました。周囲から心配する声が上がっていましたが本番ではなく、あくまでも練習試合です。全然気にする必要はありません。やはり勝ちがないと周囲から『大丈夫か?』という空気感が出てきますが、プレーしている選手は周囲が思うほど気にしていないはずです。何故なら特に3連覇を知る主力選手は勝ち方を知っていますし、『何が原因だから、今うまくいかない』ということを分かっているはずです。開幕まで経験したことのない状況ではありましたが、選手も割り切った上でフィジカル的にもメンタル的にも『今何をすべきか』を理解した上で開幕まで調整してきたと思います。プラスに考えれば、3連覇中であってもオープン戦の成績は良くなかった訳ですからね。

 今シーズンは6月開幕でレギュラーシーズンが120試合と試合数が少なくなっていることから、開幕ダッシュがより重要になるという声が多くあります。もちろん開幕ダッシュに成功するに越したことはないですが、当面50試合は勝率5割をキープするというくらいの気持ちで戦ってほしいですね。そして残り70試合あたりとなる夏場8月上旬からが勝負です。

 懸念される点は、開幕までやれることが限られていたことです。準備期間が長かったとはいえ、練習環境もいつもと違って練習量も限られ、対外試合数も例年よりも少ない状況で開幕を迎えました。それだけに、開幕ダッシュに失敗した場合の〝焦り〟というのが一番怖いですよね。そしてその焦りから故障者を出してしまうのは一番避けたいところです。

 ですから、開幕から夏場に差し掛かるまではチームとして勝率5割を死守しながら、新しい戦力や成長している選手の見極めなど、当面は戦力整備のつもりくらいで戦うのも大事になると思います。厳しい状況で開幕を迎えるのは12球団どのチームも同じですし、そういうイメージを持っているほうが、慌てることなく落ち着いて戦っていけると思います。