オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)、MLBワシントン・ナショナルズのトレーナーを務め、メジャー時代は「マック(高島の愛称)はゴッドハンドを持っている」と高い評価を得たトレーナー・高島誠。この連載では、数々のプロ野球選手を指導してきた経験をもとに、これまで公では語られることのなかった、マック流・野球パフォーマンスアップの秘密を披露していく。

1年間先発ローテを投げぬくために必要な準備とは?

野球専門のトレーニングジム「Mac’s Trainer Room」代表の高島誠です。『Mac高島の超野球塾』の連載をご覧いただき、ありがとうございます。

6月19日にプロ野球が開幕し、各球場で熱戦が繰り広げられました。カープは横浜スタジアムでDeNAと対戦。大瀬良大地選手が、投げては9回1失点、打っては同点打に試合を決めるプロ初ホームランと投打に活躍。3年連続開幕戦勝利の立役者となりました。

今回のコラムではその大瀬良大地選手にスポットを当ててみたいと思います。

自粛期間が長く調整が難しい今シーズン、トレーナーとしてまず気になるのは選手のコンディションですが、大瀬良大地選手に関しては、よく開幕に合わせてきたなと感心しました。先発ローテーション投手が出そろう6月25日(木)までの試合で、完投したのは大瀬良大地選手のみ。さらに開幕戦は、雨でグラウンドコンディションが悪かったですし、30分遅れての試合開始。その中で9回を投げ切ったわけですから、お見事としか言いようがありません。

先発投手の話をすると、各チームの先発ローテーションの中心を担う投手は、1年間をトータルで考える必要があります。ある時期だけ調子が良いという投手は、シーズンを通して先発ローテーションを守ることができません。

1年間、体のコンディションを維持するために必要なのは、体のしなやかさを落とさないようにしながらの筋トレと、投手に必要な瞬発系持久力を高める事に重点を置いた瞬発系トレーニングです。先発調整期間の間に、効果的にこれらのトレーニングを挟み、シーズン終盤に進むにつれて筋肉量が上がっていくのが理想です。

投手が筋トレで鍛えたい部分は、主に『お尻』と『太もも裏』です。下半身の筋肉量が減ると、体のバランスが崩れてしまうので、投手の動きを支える下半身を重点的に鍛えることがポイントになります。

疲労が溜まるからと筋トレをしない選手もいますが、それだと筋肉量がどんどん落ちていきます。プロ野球選手が夏場に体重を落とすということは筋肉量が減るということです。筋肉量が減ると体の出力が低下するため、球速もボールのキレも落ちてしまいます。

今シーズンは6月が開幕だったため、4月と5月にトレーニングを重ね、筋肉量を上げた選手は、しっかりとパワーを蓄えたうえでスタートがきれているはずです。分かりやすく言うと、球速が出ている投手は、自粛期間中に目的意識をもち、トレーニングしてきた選手といえます。カープのエース・大瀬良大地選手はその好例と言えるでしょう。