開幕から効果的な攻撃を見せるカープ打線。現在、チーム打率はリーグ2位の.280と好調をキープしている。

 “2020年型カープ打線”を影で支えているのが、今季から一軍打撃コーチに就任した朝山東洋コーチだ。朝山コーチは2004年に現役引退後、2005年からカープ二軍で指導者の道をスタートした。三軍コーチ、二軍外野守備・走塁コーチ、二軍打撃コーチを歴任するなど、長年ファームで若手育成に尽力し、独自の打撃理論で数々の若手を一軍へ送り出してきた。

長年二軍コーチを歴任し、今季から一軍打撃コーチとなった朝山東洋コーチ

 シーズン前、初の一軍指導について朝山コーチはこう話していた。

「選手に指導するという自分の役割は一軍でも二軍でも変わりませんが、やはり一軍は勝敗に対してシビアなだけに、シーズンが進むにつれて重圧を感じるようになるでしょうね。また二軍時代は高卒1、2年目の選手たちに対して打撃技術と並行して社会人としてのマナー等々も教えるという側面がありましたが、一軍はある程度経験や技術を持った選手が集まっているので、一段階上のレベルの指導をしている感覚はあります」

 育成の現場から、“勝利”という結果を求められる場所へ役割が変わったことで、自身の考え方にも変化が求められる。キャンプ、練習試合、開幕延期時期と、選手とコミュニケーションを図りながら指導を重ねてきた。その中で2020年型のカープ打線の構想をシーズン前はこのようにイメージしていた。

「ワンパターンで固めるのではなく、バリエーションをもたせて戦っていこうと思っています。もちろんクリーンアップは鈴木(誠也)が4番に座って3番を西川(龍馬)、5番を松山(竜平)で固めるというベースはあります。もう一人ぐらいクリーンアップを打てる選手を探しているところですが、極端な話これまで1、2番を打っていた田中(広輔)、菊池(涼介)の打順を下げてみたり……いろいろなパターンにトライして、どの形が良いかと模索しています」

 鈴木誠也を不動の4番へと戻し、出塁率の高い西川龍馬を3番に固定。この2人を軸とした新打線は当初、田中、菊池のタナキクコンビで1、2番を組んできたが、開幕直前には新外国人・ピレラを1番、田中を8番に据える攻撃的な打順を試した。さらに二軍時代から指導を続けてきたメヒア、堂林翔太らが結果を出す中で、彼らにもチャンスを与えてきた。

 そして開幕後の打線は、1、3、4番が固定され、一軍に復帰した松山は当初の構想通りに5番として起用。二軍で指導を重ねてきた堂林も結果を残し、8番に据えた田中は下位打線で能力を発揮している。そんな新打線は開幕から10試合の内、6試合で二桁安打を記録するなど、好調な出だしを見せている。

「今季重要視しているのはとにかく勝ち負けです。1安打でも勝てれば良いですし、いくら打っても負けてしまえば意味がありません。乱打戦は仮に負けても気持ちを切り替えることができますが、接戦を落とすとチームがだいぶ落ち込みます。逆に接戦をモノにすることができれば、試合時間が長くても次の日はチーム全体が活気にあふれています。長いシーズンを戦う上で、そういった部分は必ず大切になってくるはずですし、接戦を勝ちきれる打線をつくりあげていくことが今季のテーマです」

 佐々岡真司新監督の下、一軍コーチとして初めてのシーズンを戦う朝山コーチ。今後、どのような打線を構築していくのか、注目したい。