カープのドラフト1位ルーキー・森下暢仁が開幕から好調をキープし続けている。

 6月21日のプロ初登板では、強力打線を誇るDeNAに対し7回を零封。二度目の登板となった28日の中日戦では、最終的に打ち込まれたとはいえ8回2/3を投げ切りプロ初勝利を収めてみせた。

初完封は逃したものの、堂々の投球内容でプロ初勝利を収めた森下暢仁投手。

 そんな順風満帆に見えるルーキーも、ドラフト指名直後は自信と共に不安も抱えていた。「最高峰の野球の中で、自分の球が通用するのか」。明治大野球部でプロ入りに向けての最終調整を続けながらも、自問自答の毎日を送っていた。

「(ドラフト指名直後は)舞い上がるとか喜ぶという気持ちはあまりなくて、不安というと少し違うんですけど『プロの世界でも通用するのか』という気持ちの方が大きかったです。すぐに結果を残さないといけない立場だと思いますし、これまでと違って本当の意味でトップレベルの野球をすることになりますから。『勝てるのか』とか、恐怖に似た気持ちがまったくないと言ったら、やはり嘘になります」

 不安に思う気持ちは、年をまたいで合同自主トレに入った段階でも続いていた。ブルペンで見る大瀬良大地、中村恭平、塹江敦哉の直球にも圧倒された。

 だが、“過小評価”していたのは本人だけで、周囲からの評価はブルペン投球を重ねるたびに増していった。春季キャンプ前の段階で、横山竜士一軍投手コーチが早い時期での実戦登板を示唆。森下の投球を見た誰もが、大学ナンバーワン右腕に太鼓判を押すようになっていた。

「合同自主トレの早い段階から、そういうことを言ってもらえたのは本当にうれしかったです。早く見てもらえるのは、それだけアピールするチャンスだと思います」

 実際、その後は順調に実戦登板を積み重ね、オープン戦でも結果を残し開幕ローテーション入りを、ほぼ手中に収めた。しかし、新型コロナウイルスの影響でプロ野球界が未曾有の事態に見舞われると、森下の投球内容にも少なからず影響を及ぼした。

 すでに無観客での開催となっていた3月7日のオリックス戦は、4回2/3を9安打6失点。9日の開幕戦延期の発表後に行われた14日のソフトバンク戦は、4回7安打3四球9失点と2試合連続での炎上を余儀なくされた。

「本当に勝てるのか」。並の選手であれば、ドラフト指名直後に抱いた気持ちが蘇ってもおかしくない。ところが冒頭で記したように、開幕してからの投球内容はまさに圧巻だった。キャンプの段階から修正能力の高さを評価されていたように、練習試合の炎上が嘘のような投球を披露し続けている。

「周りに先輩がたくさんいる中で18番をもらっているので、自分としては自信と誇りを持ってやりたいと思います。結果を出さないとこの番号をつけている意味がないので、そこはしっかりと意識してやっていきたいと改めて思っています」

 線の細さが目立った入団直後と違い、今ではマウンド上で風格すら漂わせるようになった。背番号18を継承した次代のエースが、この先もチームに勝利を呼び込むために覚悟の投球を積み重ねていく。