石原慶幸と変わる形で7月15日に出場選手登録された磯村嘉孝が、攻守の両面で存在感を示している。

 リーグ3連覇中はいずれも“3番手”という立場ながら、一軍枠で捕手としてのスキルを磨いてきた。昨季はかねてから定評のあった打撃が開花し、打率だけではなく得点圏打率も飛躍的に向上した。代打の切り札としての起用も増え、プロ初のサヨナラ打もマークしている。また捕手としてもアドゥワ誠ら若手投手とバッテリーを組み、キャリアハイとなる65試合に出場した。

 今季は一軍昇格後、野村祐輔らとバッテリーを組み、巧みなリードでチームに勝利を呼び込んでいる。当面は會澤翼、坂倉将吾とスタメンマスクを争うことになるが、投打ともに安定感のある磯村の存在はチームとしても心強い。ここでは昨シーズン磯村が語っていた、自身が考える“捕手論”を改めて振り返っていく。
(『広島アスリートマガジン』2019年7月号掲載)

昨季は主にアドゥワ誠投手の登板時にマスクを被った磯村選手。今季は野村祐輔投手とのコンビで持ち味を発揮している。

◆形はどうあれ、勝てる捕手であること

─ 磯村選手にとっての理想の捕手像があれば聞かせてください。
「形はどうあれ、勝てる捕手であることだと思います。ベンチから信頼されて、『こいつだったら勝てるんじゃないか』と思ってもらえれば試合に出ることができますからね。僕はプロ入り前から捕手をやっていますけど、そう思うようになったのはプロに入ってからです。常に勝ちたいという思いを持ちながら守備はもちろん、打撃も走塁も、すべての面において試合で貢献できて勝てれば一番良いと思っています」

─ 捕手の醍醐味はどんな点ですか?
「常に一球一球考えて野球をやることが醍醐味です。もちろんいろんなポジションの選手も考えていると思いますけど、打者の考え、相手ベンチの考え、味方ベンチの考え、投手の考えといろいろ考えることがありますが、僕は考えることが好きなタイプなので、そういうことを考えて、自分の考えがハマったときの達成感というのは良いなと思っています」

─ 捕手として一番キツい場面は?
「やっぱり点を取られたときですかね。でも、次の点をやらないように常に考えていますけど……考えることが好きでもそれは楽しくはないですね(苦笑)」

─ ミットのこだわりを聞かせてください。
「僕がこだわっているのは『手のひらのフィット感』です。いろいろ気にする中でも一番気になる部分です。型的にあまり浅いとか深いとかないんですけど、手に馴染んだミットを好んでいます。1年目の頃は横幅が広かったんですけど、だんだん薄くして今の型になっています。ただ基本的にベースは変わらないです。前のミットは5年間くらい使いましたし、結構ハマったら修理してでも使いたい派です。年間控えも含めると2、3個あるんですけど、それらはあまり使わないですね」

─ 磯村選手なりの投手とのコミュニケーション術があれば教えてください。
「投手とは練習時間も違いますけど、試合で受けてなくても前日投げていた中継ぎ投手にはなるべくいろんな話をして、『もし組むことがあればこういう感じでいきますね』とか話はします。遠征先ではホテルの食事会場で投手陣とたわいもない話をしていますけど、性格的なものはどうですかね? だいたい分かっているつもりですけど、ホテルでの食事ではみんな冗談ばかり言っていますからね(笑)」