今季からカープに新設された通称「2.5軍」。投手コーチ、スコアラー、トレーナーの三位一体の体制で、実戦とは距離をおいた状況で選手たちの能力育成を図っていく。

昨季まで務めた一軍投手コーチからの配置転換となった畝龍実三軍統括コーチ(写真左)

 これまでの二軍の指導とは異なる、選手との向きあい方について、技術指導を担当する畝龍実三軍統括コーチは既に一定の手応えを得ている。

「球団からこういった形で時間をいただいてありがたいですね。時間をかけてじっくりやっていくのが、このシステムの良いところ。焦らずにじっくり練習ができますから」

 現在この2.5軍に在籍しているのは中﨑翔太、山口翔、矢崎拓也などいずれも腰を据えた指導が求められる選手たちだ。すでに一軍に昇格し、150キロを超える直球を武器に奮闘を続ける島内颯太郎も、今季この2.5軍に所属していた。現在在籍している投手たちも、まだ指導期間は長くないものの、徐々にその成果が現れはじめている。

「矢崎で言えば、ブルペンでの投球は徐々によくなってきています。では、打者相手にどんな投げ分けができるのかというところを見る意味で、フリー打撃に投げさせたところ、直球に続くセカンドボール、軸になる変化球が必要だとよく分かりました。現在は『フォークに関して言えばある程度アバウトで良いよ』と伝えている一方で、スライダーの精度を高める方向で指導しています」

 矢崎自身、これまでスライダーを実戦で使用する機会もあったが、最大の課題は抜け球が多い点だった。その課題を克服するために必要だったのが“下半身への意識”だった。

「直球にしても、変化球にしても、下半身でタイミングをとっていこうという話をしました。これは山口翔にしてもそうなんですが、どうしても上半身を突っ込んでしまう部分があったんです。しっかり投球の中で間合いをとって、下半身を意識するポイントをつくっていくことで、徐々に球の精度が高まってきています」

 また3連覇中に守護神としてチームに大きく貢献した中﨑も、畝コーチ指導のもと再起への道のりを一歩ずつ歩んでいる。

「今季一軍で投げているときから、上半身で投げているのが顕著に出ていました。やっぱり中崎の場合もいかに下半身で投げ切るかということです」

 一軍では徐々に勝利の方程式の形が決まりつつあるあるが、経験豊富な右腕の復活はこれ以上ない“補強”となるはずだ。当然実戦から離れる2.5軍という立ち位置だけに、未だ復帰の目処は立っていないが、「徐々に良くなっている。球は強くなってきているし、本人も腕は触れている感覚があると思う」と畝コーチも確かな手応えを口にする。

 “飛躍”あるいは“復活”を目指す投手たちは、この2.5軍での取り組みを経て、どんな進化を見せていくのか。新たな展開を見せるカープの育成現場から今後も目が離せない。