今季のカープは、序盤から厳しい戦いが続く中で、二軍で鍛錬を積んできた若手選手の活躍が目立っている。
 野手では高卒2年目の羽月隆太郎や同じく2年目の育成出身・大盛穂が必死のプレーでアピールを続け、投手では塹江敦哉や島内颯太郎らがリリーフ陣に新風を吹き込んでいる。

プロ初ホールドを記録した島内颯太郎投手など、今季は若い力の台頭が多く見られる。

 佐々岡監督の野手、投手共に伸び盛りの選手たちを起用する采配から見えてきた特徴を、OBの大野豊氏はどのように見ているのだろうか?

◆リリーフに揃えられた“直球派投手”たち

 ペナントレースが消化されている中で佐々岡監督の選手起用について徐々に特徴が出始めています。その特徴とは、固定観念にとらわれることなく、いろいろな選手にチャンスを与えているということです。もちろん結果が出ていないからという部分もありますが、監督という立場を考えると本来であれば固定メンバーで戦いたいはずですし、そちらの方が楽なものなのです。

 ただ今季に関して言えば投手野手、分け隔てなく積極的に若い選手を起用していこうという気概が感じられます。本来であれば3連覇を達成した選手たちに頼っていきたいところですが、彼らも常に万全な状態で臨めるわけではありませんし、長い目で見れば若手選手もどこかのシーズンでは使っていかなければなりません。

 現在一軍で台頭している選手は、監督が二軍投手コーチ時代に下積みをしていた選手たちが大半です。おそらくその成長の度合いや長所短所は把握しているはずですし、そういう部分で言えば、他の歴代監督にはない佐々岡監督ならではの特徴を出せているのかもしれません。また、投手陣で言えばリリーフ陣に速球派の投手が控えているのも、監督としてリリーフ投手に求めたいものが見えてくるような気がします。

 とは言っても若手選手の育成に完全に舵を切ってしまうのも考えものです。現状のチーム状況も踏まえ、まずは全力で勝率5割を目指してほしいところです。とにかく5割の壁を超えなければ、シーズンにおいて“勝負所”さえ生まれてきません。

 幸い2年目の羽月や大盛などの若手選手が打つことで、チームにこれまでになかった勢いを与えることができています。若手選手特有の泥臭さや、必死さがチームに与える効果は計り知れません。

 また、彼らのプレーを見ることで、中堅、ベテラン選手たちも再び危機感を持ってプレーできるはずです。まだ順位自体は上がってはいませんが、8月上旬にはチームとして復調気配を見せたこともありました。あの上昇気流をもう一度取り戻し、カープらしい“つなぐ野球”を展開していってほしいです。