カープ・大盛穂の勢いが止まらない。9月13日の阪神戦では今季2度目となるマルチ安打(2安打2打点)と共に、プロ初となる盗塁を記録。自慢の足で塁上を賑わせ、鈴木誠也の先制3ランを呼び込んだ。

2018年育成ドラフト1位でカープに入団した大盛穂選手。二軍で積んだ鍛錬の成果を、一軍で大いに発揮している。

 今季は初スタメン、初猛打賞もマークするなど、3桁の背番号を背負い支配下登録を目指していた昨季を思えば、予想を遥かに上回る成長スピードといっていい。

 これまでも数多くの原石が、ドラフトを介してカープに入団してきた。ただ、入団直後から華やかなスポットライトを浴びる選手は一握りで、多くの選手の出生は必ずしも世間から注目を浴びるものではなかった。

 とはいえ下位指名であっても、後にプロの世界で頭角を表した選手も少なくない。ここでは大盛と同じ左の好打者で、下位指名から後にスポットライトを浴びた選手を複数ピックアップし、通算成績と共に各選手の特長を紹介する。

◆【高卒3年目で三割達成の天才打者】前田智徳 1989年ドラフト4位
<通算成績:2188試合/2119安打/1112打点/295本塁打/68盗塁/打率.302>

 緒方孝市の担当スカウトでもあった宮川孝雄スカウトが才能を見抜き、カープが4位指名した前田智徳。高卒1年目ながら56試合に出場すると2年目の1991年には早くもレギュラーに定着。開幕戦でプロ初アーチをかけると守備でもチームに貢献し、外野手としては史上最年少でゴールデン・グラブ賞を受賞し、リーグ優勝に貢献した。

 3年目以降は主に中軸を任され、規定打席に到達した年では1991年、2003年、2007年を除き、打率3割超えをマーク。1995年に右アキレス腱断裂という大ケガに見舞われながらも、2007年には史上36人目となる2000安打を達成した。故障が響き不思議と打撃タイトルとは縁がなかったものの、通算打率(.302)が示すように芸術的な打撃は他の追随を許さなかった。