2019年ドラフト指名選手の中で、唯一の高卒内野手として入団したカープ韮澤雄也。例年、ルーキーイヤーは三軍で体づくりに終始する高卒選手も多いなか、二軍で試合出場を続けている。

慣れないセカンドのポジションで奮闘する韮澤雄也選手。打撃でも高いポテンシャルを秘めている。

◆苦戦する日々こそが、貴重な経験

 花咲徳栄高時代は、主にショートを任されていたが、プロの舞台ではショートのほかセカンド、サードの守備に就く機会も増えてきた。

「現状ではセカンドを一番多く守らせてもらっています。ショートを守りたいという気持ちがないわけではないですが、プロに入ったら自分が守りたいポジションを守れるわけではないということは分かっていたことですし、良い経験になっていると思います」

  慣れないポジションでのプレーに戸惑いを感じながらも、韮澤にとってセカンドでのプレーは野球選手として新たに視野を広げる貴重な経験となっている。

「セカンドを守らせてもらっていることで、カバーリングとか、これまで以上に頭を使わなければいけなかったりとか、また新しく野球を覚えている感覚ですね」 

 入団当初は「打球が前に飛ばない」と語っていた打撃でも、地道なウエートトレーニングの成果で確かな手応えを得ている。

「試合がない期間のウエートトレーニングなどの効果もあってか、やっと打球が前に飛ぶようになってきました。ファールも減ってきたし、一振りで捉える感覚が出てきました」

 新型コロナウイルスの影響で他球団との試合が軒並み中止になる中、 自らの課題を解消するべく鍛錬を重ねた結果、入団時は78キロだった体重が82キロまで増加した。

「試合がない分、集中してしっかりトレーニングに取り組めました。自分でもスイングが変わったと思います」

 打率自体は2割台前半だが、徐々に内容を伴う打席となってきているようだ。高校時代に選出されたU-18日本代表では、左右に打ち分ける打撃を評価されファーストとしても試合出場を果たしていただけに、プロの球に慣れてくる後半戦は打撃面でさらに期待が高まる。

 昨季一軍で高いポテンシャルを見せた小園に加え、今季一軍デビューを果たした羽月隆太郎、桒原樹などがひしめき、チーム内でも屈指の激戦区である内野陣。さらに一軍には田中広輔、菊池涼介という球界トップクラスの二遊間コンビがいるだけに、その牙城を崩すのは並大抵のことではない。「自分が今できることを、しっかりやってアピールしていくだけ」。背番号54は一軍へと続く道を、地道に一歩ずつ歩んでいる。