9月に入りカープの選手会長・田中広輔が状態を上げてきた。7月、8月と打撃不振が続いたが、9月の月間打率は打率3割台後半と復調。9月19日から21日まで、田中自身は3戦連続マルチ安打を記録するなど存在感を見せつけた。

久々に1番で出場した試合でもヒットを放った田中広輔選手。

 今シーズンは主に8番として起用されていたが、状態が上向いたことで9月22日の巨人戦では久々(昨年の7月2日以来)に1番打者として出場。依然としてチーム状況は厳しいものの、リーグ3連覇の象徴でもある1番・田中広輔、2番・菊池涼介の“タナキク”の並びが今シーズン初めて実現した。

 今季は田中にとって、逆襲を期するシーズンだ。昨シーズンはプロ6年目にして大スランプに陥った。6月20日のロッテ戦(マツダスタジアム)で歴代6位の連続フルイニング出場が途絶え、8月には出場選手登録を抹消。直後に右膝半月板の部分切除手術を行い、術後は今季に向けての調整の遅れも懸念されていた。

 ところが春季キャンプでは初日からフルメニューを消化し、実戦形式の練習に移行しても攻守両面で安定感のあるプレーを見せ首脳陣を納得させた。昨年11月に會澤翼から引き継ぐ形で新選手会長に就任した田中の順調な仕上がりは、V奪還を目指す上で間違いなく好材料だった。

「手術した箇所が悪化することもなく、ケガもなくこれているので順調に調整できていると思います」

 開幕から8番打者としてスタートし、堅実な守備でチームを支えてきた。しかし打撃の調子は上向かず、夏場は月間打率が1割台に沈むなど、チームリーダーとして物足りない数字が続いていた。

 そこへきての今回の打撃の復調だ。打率はまだ2割5分を下回っているとはいえ、持ち味の出塁率は、3割台中盤を推移するなど、リーグ3連覇当時の数字に近づいてきた。今季は打線のつながりが課題となっているだけに、リードオフマンに快音が戻ってきたのはチームにとって明るい材料である。

「(個人としては)まずはシーズンを通してケガなく、自分の仕事を全うしたいと思っています。数字的な目標は特に設定はしていません。もちろん『もう一度フルイニング出場をしたい』という思いを少しは持っていましたけど、これまでもそれをメインに考えながらプレーをしていたわけではありません。レギュラーとして試合に出続けるのが当たり前だと思ってやってきましたし、そうできるようにしたいです」

 全試合ではないものの、ここまでは大半の試合でスタメン出場を果たしている。はたして1番返り咲きを機に、田中は本来の力を取り戻すことができるのか。ここから一つでも順位を上げていくには、リーグ3連覇に貢献した主力の力は必要不可欠だ。