開幕から主力選手の不振や、故障者の続出などで苦しい戦いを強いられている今季のカープ。今季のカープ野手陣を語る上でのポイントとは? カープOBの山崎隆造氏に、全6回にわたり今季のカープ野手陣を語ってもらった。

 第1回は、今季大きな飛躍を遂げた堂林翔太選手、そして主力選手たちの不振に焦点を当てる。

山崎隆造氏も太鼓判を押す、堂林翔太選手の成長。

◆想定以上だった主力選手たちの不振

 今季のカープ打線を語る上で外せない要素であるのが堂林の覚醒です。これまでずっと期待されてきた選手が、ついにその実力を発揮しています。

 ここまでの堂林をみる限り、体重移動のバランス、バットの軌道、ヘッドの使い方など、全てにおいて良い方向に変化しています。また打席内での意識も変わり、カウントによりメリハリをつけられているように見受けられます。 

 昨季までは“強い打球を打ちたい”、“詰まった打球を打ちたくない”という意識が強すぎたのでしょう。今季調子が良かった序盤は、センターから反対方向への打球が増えてましたし、たとえ打球が詰まったとしても、内野の頭を越えればOKという意識が見受けられました。

 8月から徐々に調子を落としていますが、ここで再び開幕当初のようなスイングを取り戻せるかどうかが正念場となってきます。開幕当初あれだけの打撃を見せていたわけですから、それだけ技術を持った選手だということです。序盤とはバッテリーの攻め方も変化してきたと思いますし、戸惑う部分もあるかもしれませんがもう一度落ち着いて自分のスイングを取り戻せば、もう少し成績を上げられるはずです。

 長年期待されていた堂林の覚醒の一方でマイナス要素であるのが、3連覇に貢献した選手たちの不振、そして故障離脱者の多さです。特にセンターラインを守る選手の不振、故障離脱がもろにチーム成績に影響している形となっています

 3連覇中のカープは“層の厚いチーム”と見られていた節もありますが、今季のチームを見る限り、やはりレギュラークラスに取って代わる選手がそうたくさんいるわけではありませんでした。当然どんなチームでも世代交代の波は押し寄せてきます。しかし今季のカープでいえば本来軸となるべき選手が軒並み成績を落としてしまいました。

 たとえば、1980年代のカープは“黄金期”と呼ばれていましたが、山本浩二さん、衣笠祥雄さんという軸となる選手がどっしりと構えた上で、小早川毅彦や長嶋清幸などの若手選手が毎年台頭していました。現在一軍で経験を積んでいる若手選手たちも、もう少しプレッシャーの少ない打順や役割から起用することができれば、スムーズな“世代交代”と言えたかもしれません。ただ、たらればで語ってもしょうがないことではありますし、若手選手はこの貴重な経験を、自身が成長する糧としてほしいですね。

(vol.2に続く)