カープは10月12日、石原慶幸が今季限りで現役を引退することを発表した。本人が引退の意思を申し入れ、球団側がこれを了承。11月7日(土)の阪神戦(マツダスタジアム)で引退セレモニーが行われることとなった。

2009年にはWBC日本代表に選出され、2010年、2011年にはカープの選手会長を務めた石原慶幸選手。文字通り球界を代表する名捕手だった。写真は25年ぶりのリーグ優勝を祝い、41年ぶりに行われた優勝パレード(2016年11月5日)での一コマ。

 石原は2001年にドラフト4巡目で東北福祉大からカープに入団。プロ1年目から一軍出場を果たし初安打を記録すると、2年目には早くも116試合に出場した。3年目に開幕スタメンの座をつかむと、その後もコンスタントに試合出場を続け、初の規定打席に到達(打率.288、6本塁打)。西山秀二との正捕手争いに打ち勝ち、キャリハイとなる135試合に出場した。

 2008年からは倉義和との熾烈な正捕手争いを制し、4年連続で100試合以上に出場。球界屈指の守備力で長らくチームに貢献。2009年にはWBC日本代表に選出され、世界一も経験した。卓越したリード、キャッチング技術を証明するように、2010年と2013年には前田健太と、2016年には野村祐輔と最優秀バッテリー賞を受賞している。

 2016年には106試合に出場。黒田博樹やクリス・ジョンソンら主力投手の持ち味を引き出し、自身初となるベストナインとゴールデン・グラブ賞を獲得するなど、25年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。

 2017年には史上189人目となる1500試合出場を記録。2018年5月にはプロ野球史上最年長となる38歳8カ月で1000安打を達成した。プロ19年で残した1022安打は、カープの捕手では史上最多の数字である。

 近年は主にK.ジョンソンとのバッテリーで勝利に貢献しながら、黒田博樹、新井貴浩らに代わる精神的支柱としてチームをグラウンド内外から支え続けた。石原自身も若手選手の手本となるべく、2019年シーズン終了後には以下のようなコメントを残している。

「試合に出ることが減ってきているので、試合に出ていないときにちゃんとしないといけないですし、僕がそこに甘えてしまっていたら、若い子がその姿を見て『それでもいいんだ』と思ってはいけないというのはありました。なんとか話しやすい雰囲気をつくるために、こちらから若い子に話しかけたりしてコミュニケーションを大事に考えていましたね」

 會澤翼をはじめ磯村嘉孝、坂倉将吾と、続々と正捕手候補が現れるなか、石原は40歳を迎える2020年シーズンもキャンプ時から体をいじめ抜いた。そこに私利私欲はなし。あくまでチームのために、今できるベストを追求し続けた。

「(目標について)個人的なことはありませんね。2019年はチームとして悔しい思いをしました。なので、もう一度優勝できるように、自分の立場で何ができるのかを考えながら、もう一回優勝したいですね」 

 昨季の雪辱を果たすべく燃えていた今季だったが、8月27日のDeNA戦(横浜)で遊ゴロを放って一塁に全力疾走する際に左足を負傷。担架での退場を余儀なくされ、翌日には出場選手登録を抹消された。9月1日に三軍に合流しリハビリに励んでいたものの、実戦復帰に至らぬまま今回の発表を迎えることとなった。

 ここまでの通算成績は1619試合、4334打数、1022安打、66本塁打、378打点、打率.236。赤ヘル一筋19年、攻守にわたってチームの屋台骨を支えてきた球界最年長捕手が、惜しまれつつカープのユニホームに別れを告げる。