10月に入りやや息を吹き返した感のあるカープだが、借金は二桁前後を推移している。その要因となっているのがチーム防御率を見ても分かるように、投手陣の長引く不振や主力投手の戦線離脱だ。

 ただ、そのような状況下でも先発ローテーションの一角で光を放つ選手も存在する。カープOBの大野豊氏に、尻上がりで状態を上げてきた2投手について語ってもらった。

防御率2点台前半と、登板を重ねるごとに状態を上げている中村祐太投手。

◆主力投手が離脱も、九里、中村祐が存在感

 開幕時は大瀬良、床田、森下、K・ジョンソン、九里、遠藤という先発ローテーションでスタートしたカープですが、シーズン終盤を迎えて顔ぶれがだいぶ変わりました。カープにとって最大の誤算だったのが、K・ジョンソンの不調です。左のエースが1勝もできないというのは誰も予想できなかった事です。

 そんな状況下でエースの大瀬良、途中からローテに加わった野村も手術を伴う故障で戦線を離脱してしまいました。毎年言うように6人だけで1年間を回すことは不可能ですが、エース級の投手がこれだけ欠けると苦しい戦いとなってしまいます。

 そんななか、九里が開幕から一度も先発を外れることなく投げ続けています。彼は良いときと悪いときがはっきり分かれるタイプの投手という印象ですが、ここ数試合は目覚めたというか良い投球内容を見せてくれています。

 彼は気持ちを前面に出せる投手ですが、そこが悪い方向に進めば投げ急ぎや力みにつながってしまいます。ただ、そこを上手くコントロールすることで、打者と良い形で勝負できる場面が増えています。

 新たに先発ローテーションに加わった投手では、中村祐太が頑張っています。スライダーを有効に使って2017年に5勝を挙げました。当時から直球は140キロ前後で、決して驚くような球を投げているわけではないんです。それでも打者側の立場からすると、今一つタイミングが合っていません。投球フォームの中で自然と打者のタイミングを外せる、そういう何かを持っているんでしょうね。

 今季初登板から2試合連続で初回に本塁打を打たれましたが、得点圏での被打率は0割です。初回以外は抑えているわけですから、序盤を乗り切ってリズムに乗ればゲームをつくるだけの力を持っている投手です。主力投手の離脱でつかんだチャンスを生かして、来季につながるような投球内容と結果をしっかり残してほしいですね。