花巻東高の大谷翔平(現エンゼルス)、大阪桐蔭高の藤浪晋太郎(阪神)といった超高校級選手が目白押しだった2012年のプロ野球ドラフト会議。この年カープは、将来、“日本代表の4番”を担うことのなる高校生野手を獲得した。それがドラフト2位・二松学舎大付高の鈴木誠也だ。

1年目から一軍出場を果たし、今や球界を代表する打者へと成長した鈴木誠也選手

「高校時代ずっとプロを目指していましたし、プロしか考えていませんでした」

 卒業後の進路の選択肢は“プロ1本”だったという鈴木。ただ、甲子園出場経験はなく、大谷や藤浪のように全国的に有名な選手ではなかった。それゆえ、上位指名は、予想だにしていなかったという。

「(ドラフトは)学校の地下ホールでネットを更新しながら見ていました。関係者の方から『広島2位指名』という連絡があって、みんな喜んでくれました。下位指名だと思っていたので本当にビックリしましたし、頭が真っ白で実感が湧きませんでした」

 指名後は学校を訪問し指名挨拶を行った当時の野村謙二郎監督に対しては「テレビで見たことがある人だと思って緊張しました。記者の方も増えて、もっと緊張していましたね(苦笑)」と高校生らしい素朴なコメントを残している。

 プロ入り3カ月後に行なった本誌インタビューで、初々しさを見せながらドラフトをそのように振り返ってくれていた鈴木。プロ入り後は周囲の期待を遥かに上回る成長スピードを見せていった。

 プロ1年目から一軍の試合に出場し初安打初打点を記録。2年目以降も一軍で経験を重ねると、プロ4年目の2016年に大ブレイク。打率.335・29本塁打・95打点の数字を残し、25年ぶりのリーグ優勝に貢献した。2019年からは前田智徳が付けていた背番号「1」を背負い、カープの4番としてチームを牽引。日本代表でも4番を任される選手へと成長を遂げている。

 ちなみに2012年のドラフト1位指名でカープは森雄大(楽天)を指名するも重複し抽選で外し、外れ1位で増田達至(西武)を指名するもまたしても抽選を外すなど、思惑通りに事が進まなかった。しかし、結果的に後にカープを背負って立つ鈴木誠也の獲得に成功したことで、振り返ってみれば大成功のドラフトだったと言えるだろう。