2015年のドラフト1位・岡田明丈にとって2020年は試練の年となった。
キャンプ前に掲げられた佐々岡真司新監督の方針の中でも大きな注目を集めた岡田明丈の“中継ぎ転向プラン”。2017年に初の二桁勝利を挙げ、先発ローテーションの一角を担いながら、年々成績を落とす岡田にとって、再起を図るべく絶好の機会を与えられた。
「2019年は自分の表現したいことが表現しきれないというか、自分が取り組んでいることに対して結果が結びつかない点が苦しかったですね」
2019年オフに突入する直前に、佐々岡監督から直々に伝えられた中継ぎ転向。
「正直最初は『やってみよう』と思うより、『できるかな……』という不安の方が大きかったです」 潜在能力、とりわけ直球の力強さは誰もが認めるところ。しかし、リリーフという新境地での投球も思うような結果を生み出せず、もがき苦しむこととなった。
「中継ぎで1イニングを投げるとなった時に、どうしても抑えたいという思いを抑えきれず、力んでしまっている自分がいました。それでフォームも徐々に崩れてしまいました」
今季開幕当初、一軍ではリリーフ陣が不安定な投球を続けていたが、本来の投球を見失っていた背番号17に一軍昇格の声は掛からず、シーズン終盤まで二軍で過ごすこととなった。 現在は、再び岡田自身慣れ親しんだ先発として調整を続けている。
「やっぱり調整も含めて慣れている部分はあります。ルーティンや、登板前の過ごし方を含めて、先発の方が経験があるのでやりやすい部分は当然あります」
先発としての再起の道も平坦なものではなかった。9月12日のオリックス戦(オセアンBS)では四球、そして暴投などで2回途中6失点。今季先発として初めて2イニング以上の回を投げた9月27日のオリックス戦(由宇)では3回まで無失点と上々の立ち上がりを見せたが、4回以降制球を乱し5回途中4失点と2試合連続して課題の制球面での不安を覗かせた。
「自分の気持ちが前に出過ぎて、それによってフォームが崩れてしまっていたと思います。やっぱりそういうところが急に出る試合は、どうしても安定しないし、結果が出ません」
しかし復活に向けた兆しを感じさせる投球も見せている。10月4日の阪神戦(由宇)では「自分がやってきたことが良い結果として出せた」と岡田自身も納得の投球を展開。4四死球を出しながら6回を投げ切り1失点と先発としての役割を果たした。
「制球力がやっぱり課題だと思うのですが、今はそこまで細かく考えすぎず、ストライクゾーンを“2分割”ぐらいにするつもりで投球しています。自分の場合、一番見せていきたいのは勢いのある球ですから」
細かな制球にこだわるあまり、投球フォームを崩してしまった苦い経験を糧に、現在は原点回帰とも言うべく、再び自らの“直球”を前面に押し出す投球を心がけている。
「今季は世間的にもいろいろありましたし、個人的にも思うようにいかず大変なシーズンでした。試合自体残り少ないですが、一つひとつのことから学びながら、もう一度一軍で投げられるようにしていきたいです。先を見据えて、しっかり投げられるように、準備をして良い形でシーズンが終われればと思います」
今季一軍登板がなく終われば、プロ入り以来初のこと。再起をかける剛腕はこの悔しさを乗り越え、前だけを向いて進む。