事前のメディア報道では予想されていない上位でのサプライズ指名。これもドラフト会議の醍醐味の一つだ。

 2014年のプロ野球ドラフト会議で、カープは2位で薮田和樹(亜細亜大)を指名。2017年に15勝をあげブレイクを果たす投手だが、当時は無名の選手。指名の瞬間、驚嘆の声を挙げた方は少なくなかったはずだ。おそらく薮田本人も喜びと共に驚きに包まれたはずだ。

2014年12月に行われた入団会見時の塹江敦哉投手。2020年は中継ぎとして一軍に定着した。

 この年、薮田に続くドラフト3位で指名したのが、高松北高の塹江敦哉だ。この塹江もカープの上位指名に驚きを隠せなかったという。

「周囲のメディアでは阪神、しかも4位以降の指名が濃厚だというお話だったのでビックリしました。カープから3位という順位で指名していただいたことに本当にうれしく思います」

 高校3年夏に149kmを記録し大気の片鱗を見せた左腕を、カープのスカウトは見逃していなかった。そしてドラフト会議は情報戦とも言われる。もしかすると、周囲に流れる情報を逆手にとり、3位での指名を決めたのかもしれない。

 予想を上回る順位でカープから指名を受けた塹江だが、じつは広島は縁の深い街だった。

「兄弟が2人とも広島に進学したので、まさか3人とも広島にお世話になるとは思いませんでした(笑)。考えてみれば、高校の監督さんも広島大出身でしたし、広島新庄高とも2年の冬に練習でお邪魔したこともありました。そういう意味では一番縁のあるところに入ったんだなと思いましたし、カープにも愛着を感じています」

 入団後の本誌インタビューで、広島愛、カープ愛を話してくれた塹江。プロ2年目に一軍デビュー。昨年は11試合、一軍マウンドを経験すると、プロ6年目の今季、リリーフとしてブレイクを果たした。シーズン途中から、フランスアと共に勝利の方程式を任され、チーム2位の52試合に登板。チームトップの19ホールドを挙げる活躍をみせた。

「たとえ代役であっても与えられたチャンスを生かすということが大事。チームの期待に応えることで自分の信頼に繋がってくるはずです。しっかりと信頼を築いて“こいつが投げるなら大丈夫だ”と思われるような投手になりたいです」

 1年目のインタビューでは、プロ野球選手としてのビジョンも話してくれた塹江。その言葉通り、今季、リリーフ陣の不調から巡ってきたチャンスを見事に生かし、セットアッパーに定着。一軍ブルペンに欠かせない選手へと成長した。来季以降も一軍でのさらなる活躍を期待したい。