チーム全体での打撃成績は悪くなかったものの、シーズン通して投打の歯車が噛み合わなかった感は否めない。その中でカープOBの山崎隆造氏が注目したのが、以下の3選手。来季への期待も込め、元赤ヘル戦士が各選手を個別解説する。

コンディション不良による登録抹消が響いたが、今季も随所で勝負強い打撃を見せた西川龍馬選手。

◆西川龍馬「高いセンスを持っているだけに、メリハリある打撃もできるのでは!?」
<成績:76試合/296打数/90安打/打率.304/6本塁打/32打点/6盗塁>

 今季は打線の中で特に注目していたのが西川龍馬です。タイミングの取り方、そしてバットに吸い付くような打球を生み出せるインサイドアウトのスイング、非常に素晴らしいものを持った選手だと思います。

 またヘッドスピードの出し方も非常にうまく、長打もしっかり狙えるタイプの打者です。シーズン終盤に4番を任された時期もありましたが、周囲の信頼を集めている証拠であり、私自身それだけの実力があると思っています。

 ただ西川の特徴でもある“悪球打ち”については賛否が分かれるところであり、現時点で私はどちらかと言えば直した方が良いのではと思っています。当然、人それぞれの考え方があり、短所を直そうとすることで長所もなくなってしまったら元も子もありません。

 ただ、単純に考えれば厳しい球、というか本来ボールになる球を見逃せば、それだけ甘い球がくる確率が高くなるわけです。甘いところにくればヒットにできる技術を持っているだけに、少しもったいないなという印象を覚えます。

 また早いカウントと、追い込まれた後で同じようなスイングをしてしまっている点も改善の余地があるように思います。もう少しカウントによってメリハリのある打撃をすることで相手バッテリーから見てさらに打ち取りづらい打者になるはずです。

◆田中広輔「2番としても活躍。終盤に見せた粘りこそ真骨頂」
<成績:112試合/378打数/95安打/打率.251/8本塁打/39打点/8盗塁>

 昨季の途中の故障離脱から復活を期待された田中広輔ですが、今季前半は淡白な打席が多く内容としても物足りないものでした。しかし、終盤になり彼本来の粘り強さが出てきたことで2番を任されるようになってきました。

 彼の特徴として、結果が出ているときと出ていないときもスイング自体はそこまで大きな変化が見えないというものがあります。多少踏み込みが甘い、あるいはスイング軌道が下がっている部分はあるのですが、他の選手ほど大きくバランスを崩しているという印象はありません。

 そういう意味では推測になってしまいますが、彼を勢いづけるポイントとはもしかしたらメンタルの部分なのかもしれません。前半と後半ではかなり数字も変わってきただけに彼自身ある程度光が見えたのではないでしょうか。

◆坂倉将吾「課題は山積みだが、勤勉さで克服を目指せ!」
<成績:81試合/209打数/60安打/打率.287/3本塁打/26打点/1盗塁>

 プロ4年目の坂倉は、打撃面は今季大きな成長を遂げた若手選手の一人です。どっしりとした構えから、軸がブレずにスイングできているのは非常に良い点です。以前は速球を打ちづらそうにしていた場面もありましたが、今季は力負けせずにしっかりスイングできるようになったからこそ成績がついてきたのだと思います。

 ただ捕手というポジションは打つだけではレギュラーにはなれません。そういう意味では要所での後逸が目立ちましたし、まだまだレベルアップが必要です。

 ただしグラウンドではもちろん、ベンチ内でも積極的に投手とコミュニケーションを取る姿勢を見せていたのは評価したいポイントです。1年目から継続して野球に対して真摯に向き合っている印象ですし、来季はさらに成長した姿を見せてくれると期待しています。