佐々岡カープ元年の2020年シーズンの記録を振り返っていく本コーナー。第1回は1年目から10勝を挙げた森下暢仁投手の記念すべき初登板・6月21日のDeNA戦(横浜スタジアムを振り返る。

プロ初登板では惜しくも初勝利とはならなかったが、7回4安打無失点と上々のデビューを飾った森下暢仁選手。

◆背番号18が堂々デビュー!ドラ1右腕・森下暢仁、圧巻の初登板

 佐々岡真司、前田健太、カープの“エース”が背負い守り続けた「背番号18」。5年ぶりに復活したエースナンバーを託されたドラ1右腕・森下暢仁は、周囲の期待通り、2020年の開幕ローテーションに抜擢された。

 しかし、そこまでの道のりは決して平坦ではなかった。

 3月の開幕に向けて調整を続けてきたが、コロナ禍の影響でプロ初となるシーズンは延期に。先の見えない中で調整を続けることになった。

「とにかく開幕に向けて、できることをやるのみでした。(1年目で)調整方法も分からない部分があったので、コーチやトレーニングの方々の指導のもと練習をするだけでしたね」

 約3カ月に及ぶ延期期間は一軍に帯同し、先輩投手から刺激も受けながら調整を重ねた。しかし、実戦が始まるとプロの洗礼を浴びることになる。

 開幕前の練習試合、6月7日のオリックス戦で5回途中6失点、6月14日のソフトバンク戦では4回9失点と打ち込まれ、大きな不安を残し開幕を迎えることになった。

「練習試合2試合では打たれてしまいましたが、しっかりとした球を投げられている手応えはありました。なので、練習試合の結果をシーズンに入って出さないようにしたいと思っていました」

 練習試合では結果を残せなかったが、佐々岡監督の信頼は揺るがず、森下は開幕ローテーション入りを果たした。デビュー戦として任されたのは開幕カードの3戦目。6月21日のDeNA戦だった。

 不安と緊張が入り混じった初回。先頭の梶谷隆幸に安打も許すも、続く乙坂智をサードライナー併殺、昨年の本塁打王ソトを空振り三振に打ち取り、上々の立ち上がりをみせた。そして、2回の満塁のピンチを無失点で切り抜けると、尻上がりに調子を上げていき、4回裏はこの試合初めての三者凡退。勝利投手の権利がかかった5回裏も走者を背負ったが連続三振できりぬけた。

 以降も力強い直球に、効果的に変化球を織り交ぜDeNA打線を翻弄。7回104球を投げて無失点。4被安打2四球8奪三振。3回以降はわずか1安打の素晴らしいピッチングでプロ初登板を終えた。

「プロ初登板は無観客試合ではありましたが、練習試合と違ってやっぱり最初は緊張した部分がありました。ですが、『勝たないといけない』という強い気持ちで臨むことができたので、ある程度良い投球ができたと思います」

 リリーフ陣が打たれプロ初登板・初勝利とはならなかったが、上々のデビューを飾った森下。ルーキーとは思えない安定感をみせ、開幕前の不安を一掃してみせた。森下は、この一週間後の6月28日、プロ2度目の先発登板となった中日戦(ナゴヤドーム)でプロ初勝利。“カープの背番号18”の歴史に、新たな足跡を刻んだ。