佐々岡カープ元年、主力選手が故障などで苦しむ姿が目立つ中で、多くの若手選手が躍動した。ここでは「初」をキーワードに2020年シーズンの佐々岡カープで生まれた記録を振り返っていく。今回は6年目の塹江敦哉投手がプロ初勝利を挙げた・7月8日のDeNA戦(マツダスタジアム)を振り返る。

7月8日のDeNA戦。塹江敦哉選手が1回を三者凡退に抑え、開幕から5試合連続無失点リリーフを記録。その直後、打線が逆転に成功し、背番号36にプロ初勝利が舞い込んだ。

◆今季セットアッパーに定着した塹江の好投が呼び込んだ劇的逆転劇

 今季チーム低迷の要因の一つとなったリリーフ陣。数字を期待された選手が不振に陥るなか、6年目にして初の開幕一軍を勝ち取った塹江敦哉が存在感を示した。

 開幕前の練習試合からリリーフとして結果を残し続けた塹江は、6月23日の巨人戦(東京ドーム)で今季初登板を果たし1回を無失点。以降も4試合連続で無失点リリーフをみせる活躍をみせた。

 そして迎えた7月8日のDeNA戦。出番は1点を追う8回に訪れた。2番手でマウンドにあがると、先頭の梶谷隆幸をショートゴロ。続くソトは3球ボールを続くも、0-3からストライクを投げきりセカンドゴロ。最後はオースティンにストライク先行の真っ向勝負を挑み、空振り三振に。1番から始まる上位打線を3人で封じ、攻撃にリズムを与える投球を披露した。

 するとその裏、カープ打線が奮起。1死満塁のチャンスを作ると、堂林翔太がパットンから起死回生の逆転満塁本塁打を放ち、一気に逆転。9回を菊池保則が抑え、塹江にプロ初勝利が舞い込んだ。

「僅差だったり、勝ちゲームなど、開幕から良い場面でどんどん投げさせてもらえるようになってきましたが、投げる場面が変わっても大きく変わることなく、自分の投球ができているのは良い部分だと思います」

 振り返ると、塹江のプロ生活は、防御率162.00から始まった。2年目の2016年9月11日。25年ぶりのリーグ優勝を果たした翌日の巨人戦(東京ドーム)が一軍デビューの舞台となった。3番手としてマウンドにあがったが、記念すべき初球を、当時巨人に在籍していた長野久義にスタンドへ運ばれると、打者7人から1死しか奪えず6失点。一軍のレベルの高さを痛感する初登板となった。

 2017年と2018年は一軍登板はなく、2019年は中継ぎとして11試合に登板。プロの洗礼を浴び苦労を重ねた塹江が、プロ6年目にしてようやく勝ち星の味をあじわった。

「自分にできることが多いわけではないので、とにかく自分の力を出し切ることに集中しています」

 初勝利を挙げた試合以降も、無失点リリーフを続け、開幕から8試合連続無失点を記録。結果を残し続けたことで、塹江の役割も変わり、シーズン途中からはセットアッパーに定着した。

「投げる場面が変わったことで、落ち着きがなくなり失敗してしまうこともありましたし、この展開での登板では“何が大事なのか?”と自問自答することもありました。そういった経験を踏まえて、シーズン途中からは、シンプルに“一球を大事にできているか?”という意識を大切にして投げるようになりました。改めて思うのは、チームの勝ちを守り抜くということはすごく大変なことだと感じています」

 様々な経験を糧にして、一軍のブルペンに欠かせない存在に成長した背番号36。来季はさらなる飛躍を遂げてみせる。