◆「目の前の試合、目の前の打席に集中」という思いで試合に臨み続けた

 堂林にとっては、野村謙二郎監督との出会いも大きかった。野村監督でなければ、周囲を驚かせた堂林の開幕一軍デビューは実現しなかったかもしれない。

「野村監督からは『目の前の試合、目の前の打席に集中』と常に言われています。また、高校時代からそういう教えの元でやってきて自分のスタイルでもあるので、これからも変えることはありません。もし、それを変えてしまえば、自分は選手として終わったも同然です」

 プロ3年目とはいえ、一軍は初めての経験。サードの守備ではエラーで投手陣の足を引っ張る試合もあれば、チャンスで三振を重ね得点機を逸するシーンも数多く見かけた。堂林で負けた試合と言われてもおかしくない試合も数多くあった。しかし、どれだけミスをしても、堂林は信条である“堂々としたプレー”を心がけてきた。

 

「取り返しのつかないミスもありますけど、打って返せば良いという気持ちでいますし、弱いところは見せないようにしています。監督からも『エラーしても三振しても下を向くな』と言われています。例えば、同じ三振でも見逃し三振では何も起きないので、振って何かアクションを起こしていきたいです。自分はまだ1年目の選手だと思っているので、今の(積極的に振っていく)スタイルを変えるつもりはありませんし、続けていくつもりです。球を見ていても面白くないですから。プレッシャーなどが厳しくなるとは思いますが。見て終わるよりもアクションを起こしていきたいと思います」

 初めて過ごす一軍の日々の中で成功と失敗を繰り返しながら、期待のスラッガーは成長を続けた。そして、終わってみれば、チームでただひとり全試合に出場し、打率.242・14本塁打・45打点をマーク。本塁打はチーム最多の本数を記録した。一方でシーズン最多三振記録となる150三振を喫し、両リーグワーストの29失策を犯すなど、課題も見えた一年となった。

 しかし、思い切りの良いバッティングを武器に、チームの中で、日に日に存在感が増していったのは確かなこと。眩いばかりの光を放ち、カープの未来を一身に背負った堂林。シーズン終了後には、野村監督が現役時代に背負っていた背番号「7」を譲り受けた。

(#3に続く)