3年ぶりのV奪回を目指し、いよいよ2月1日からキャンプがスタートする佐々岡カープ。ルーキーや助っ人などの新戦力に注目が集まる中、河田雄祐一軍ヘッドコーチの就任も2021年のカープにおける大きなトピックの一つだ。

2016年、外野守備走塁コーチ時代の河田雄祐コーチ。情熱的な指導で若手選手たちを鍛え上げていた。

◆外から見て気づいたカープ外野陣の弱点

 河田コーチが前回カープでコーチを務めていたのは2016年から2017年までの2年間。連覇を果たしたチームを支えた名コーチとして、その手腕を評価する声は大きい。

 河田コーチは1985年ドラフト3位でカープに入団し、2002年に西武で現役引退。そして2003年から西武の各コーチを歴任した後、2016年に20年ぶりに古巣・カープのユニホームに袖を通すこととなった。

 一軍外野守備走塁コーチとして、1度目のカープコーチ就任時には当時の外野守備について「見ていて、寂しい気持ちはありました。何とか守備のレベルを高くしたい。西武時代に交流戦をやっていて寂しく感じた」と指摘。2015年シーズン終了後の秋季キャンプから情熱的な指導を選手たちに施した。

 当時は不動のレギュラー・丸佳浩に加え、鈴木誠也や、野間峻祥など伸び盛りの若手選手たちが一軍に在籍。親子ほどの年齢差のある若手選手たちへの指導について、以下のように語っている。

「若い子が嫌いじゃないんです。(鈴木)誠也なんて、私の息子より年下ですから。最近は親の気持ちにもなったりしていますよ(笑)また、カープの若手選手はみんな真面目なんですよね。こちらが目くじらを立てなくても練習をこなしてくれるんです」(『広島アスリートマガジン』2016年19
 時には大声を張り上げながらノックを放ち、時には身振り手振りを交えながら守備位置・捕球態勢などの指導を行う。河田自身の明快な性格や指導方針も相まって、カープの外野陣は着実に守備力をつけていった。当時の河田コーチが外野守備で意識していたのは“一歩目の意識”。

「12球団どこもそうだけど、後ろの打球は捕れる。でもどうしても前の打球を取れない」(『広島アスリートマガジン』2016年9月号)

 失点に直結する外野手を越す打球に加え、積極的な判断が求められる前方向への打球処理に意識を向けるため、キャンプから外野陣への厳しいノックを課していた。

 25年ぶりの優勝を果たした2016年は打撃力、投手力共にリーグNo.1と評されたが、数字には現れにくい守備面でも選手個々人の成長があり、その成長に河田コーチが寄与していたのは間違いない。さらに河田は守備力の向上だけにとどまらず、カープ伝統の“機動力野球”の復権のキーマンとしても大きく貢献することになる。

(Vol.2に続く)