東京五輪で金メダルを目指す侍ジャパンのメンバーに、カープから12球団最多となる4選手が選出された。この連載では、侍ジャパンの4番として期待がかかる鈴木誠也が、過去に本誌の独占インタビューで語った思いを取り上げ、プロ入りからここまでの軌跡を振り返る。

 8回目となる今回は、交流戦で2試合連続サヨナラ打を放つなど、一躍"時の人"となったプロ4年目。2016年夏に行ったインタビューから鈴木の言葉を紹介する。
(広島アスリートマガジン2020特別増刊号「鈴木誠也 全インタビュー集」に掲載)

プロ4年目21歳の鈴木誠也選手。

◆["神った直後"の鈴木に迫る]誠也の魅力って何だ?(前編)

─まずお聞きしたいのですが、交流戦・オリックス3連戦の2試合連続サヨナラ本塁打、3試合連続決勝本塁打と、ものすごい活躍でした。今改めてあの3日間を振り返ってどんな気持ちですか?

「自分でもどうして打てたのか、球場で何が起きたのかよく分からない感じでした。自分が何でこんなに変わったのかも分からないですね(苦笑)」

─2試合連続サヨナラ本塁打の場面、どんな気持ちで打席に入っていたのですか?

「1日目は前の打席のときにサヨナラ勝ちのチャンスで抑えられていたので、『ここで何とか打ちたい』という気持ちだけで打席に入っていました。2日目はそんなことも思わず、『ボテボテの当たりでゲッツーでもいいから1点取りたい』という気持ちで打席に入っていました。マジで奇跡だと思います(笑)」

─プロ初のサヨナラ本塁打の翌日、試合では鈴木選手の全打席でファンのみなさんの歓声が違ったように感じました。

「確かにあの日はすごいなと思いましたが、特にプレッシャーを感じることはありませんでした。あの試合は僕の後が新井(貴浩)さんだったので、『新井さんに任せよう』という意識でした。とにかく今は後ろにつないでいこうという意識しかないので、それが良い方向にいっていると思います。新井さんが後ろにいてくれるだけでも安心感がありますからね」

─ヒーローインタビューでは『最高でーす!』を連呼するなど、スタンドを沸かしました。

「1日目に『最高です!』を何度か言って、終わった後にチームのみんなに『最高です! だけでいけ』と言われたんです。それで2日目のヒーローインタビューはそれを貫き通しちゃいました(笑)。でも、3日目のヒーローインタビューはさすがに、これではヒーローインタビューにならないと思ったので……、ちょっとだけ話をさせてもらいました(苦笑)」

─3日連続でヒーローインタビューを受けるというのは、どんな気持ちでしたか?

「本音を言うと興奮しているので、あまり喋りたくはないんですよね(苦笑)。自分でもどうして打てたかが分からなくて、どうやって気持ちを伝えれば良いか分からなかったですし、『最高!』という言葉しかないんですよね(笑)。でもこれは本心です」

─ヒーローインタビューといえば、水掛けパフォーマンスもすっかり定着してきました。

「今年はどちらかと言えば、記念すべき試合のときにやることが多いですね。自分で水をかぶったときがありましたが……、あれは琢朗さん(石井・当時一軍打撃コーチ)に『自分でかぶれ!』って言われたのでやりました(笑)」

─この活躍ぶりに、ご家族も喜んでいたのではないでしょうか?

「父親からは連絡があって『こっちは鳥肌が立ったぞ』と言われましたが、『ありがとう。でもこれからだから浮かれない』というような会話をしました。周囲は乗せてくれますが、それに乗りたくないですし、家族にも乗られると嫌なので(笑)。もちろん喜んでくれるのはすごくうれしいですけど、家族から言われると僕も浮かれそうになるので、『何も言わないで』と、家族には言っています(苦笑)。今後打てなくなることが絶対にあると思うので、まずは一日一日を必死にやっていきたい気持ちだけです」

◆2013年から2020年に行った鈴木誠也のインタビューは、広島アスリートマガジン2020特別増刊号「鈴木誠也 全インタビュー集」で公開中。