今年の夏・8月18日、カープ球団を通して、昨季限りでカープを退団したクリス・ジョンソンの現役引退が発表された。2015年にカープに加入し、在籍6年間で57勝をあげ、球団史上初の3連覇に大きく貢献した左腕。ここでは『惜別カープ戦士特集』として、現役時代にジョンソンが紡いだ言葉を、本誌で行った独占インタビューをもとに振り返る。

 今回は来日2年目の2016年。初の開幕投手を務めるなど、シーズン序盤から先発投手陣の柱として結果を残し続けたジョンソンが、ペナントレース終了後に本誌に話した思いを抜粋して紹介する。(『広島アスリートマガジン』2016年11月号掲載)

 また、発売中の広島アスリートマガジン12月号では、クリス・ジョンソンの独占ロングインタビューを実施。カープファンが待っている、“KJのメッセージ”をお届けする。

K.ジョンソンは、エルドレッド(右・球団駐米スカウト)と共に、チームの大きな戦力となり、球団史上初となる3連覇を支えた。左腕エースと右の長距離砲、2人は、チームにとって必要不可欠な存在だった(写真2016年5月24日のお立ち台)

◆忘れ難い優勝の瞬間

―2016年を振り返ってみて、ご自身のなかで満足している点を教えてください。

「シーズンを通して、一番満足していることは、やっぱりシーズン優勝です。その中でも優勝を達成した瞬間は、忘れがたい思い出の一つです。グラウンド上でチームメートと喜びを分かちあうというのは非常に素晴らしい瞬間だと思いました。優勝ができたということはみんなが良い形でシーズンを勝ち進めていったということです。勝ちがどんどん増えていくというその過程も素晴らしかったと思いますし、それがチームメート全員で成し遂げたということことが自分でも実感できるシーズンでした。全体的に見てチームとしても、個人としても非常に満足のいくシーズンだったと思います」

―優勝が決まった瞬間はどのような気持ちになりましたか?

「全ての感情が出てしまいました。喜び、うれしさ、涙、本当に気持ちというすべての気持ちが出ていたと思います。もちろんこれは私だけではなく、全員がそういう気持ちだったと思います。本当に幸せな瞬間でした」

―来日1年目から結果を残されましたが、今季に臨むにあたり、投球について変えたことはありましたか?

「特にありません。今季も石原(慶幸)と1年間バッテリーを組ませてもらいましたが、彼が自分の持ち味を十分に引き出してくれたと思っています。もちろん今季は2年目なのでいろいろ相手チームも研究してきた部分はありました。そうした部分はチームや打者ごとにいろいろ勉強して、攻め方についてマイナーチェンジを行い対処しました。ただそれも大きく投球を変えたというわけではありませんし、あくまでもそこは自分と石原でゲームの流れを見ながら、試していくといった程度であり、少しの変化です」

―今季は26試合に先発登板をされましたが、ご自身のすべての投球を振り返ってみて、印象に残っている登板はありますか?

「今季も本当にいろいろな試合を経験しただけに一つに絞るのは難しいですね。ただ、どうしても一つを選ぶのであれば、マジック点灯後に東京ドームで登板した8月23日の対巨人戦です。試合結果としては私が9回を投げて降板し、延長戦の末敗北してしまったのですが、特に記憶に残っています。あの試合は、自分のなかで一番気持ちが入っていた登板だと思います。9回まで投げて、勝敗が決まっていないという状況も珍しいですからね。そういう緊迫した試合で自分がマウンドに立ち続けることができたというのは、特に印象に残りました」

―新井貴浩選手が2000安打(4月26日対ヤクルト戦(神宮球場))と300号本塁打(8月2日対ヤクルト戦(神宮球場))を達成した試合、どちらもマウンドに上がっています。

「どちらの試合も神宮球場の半分が赤く染まっていて、本当にすごい雰囲気でした。選手たちはいつも素晴らしいプレーを見せていますがあの雰囲気にうまく乗り、実力を最大限に発揮できたと思います。新井選手が記録を達成した瞬間は、ファンの盛り上がりがすごかったです。新井選手は記録達成に安心したのか分かりませんが、その後もどんどん打ってくれていましたね。特に2000安打は、シーズン序盤に決めることができて良かったと思います」