野村祐輔がプロ入り後、9年間カープで野村と共にプレーし、3連覇を果たした石原慶幸一軍バッテリーコーチ。背番号19と通算79試合バッテリーを組んできた女房役に忘れられない思い出を聞いた。

2020年まで広島でプレーし、現在は一軍バッテリーコーチを務める石原コーチ

二度目の最優秀バッテリー賞は、違う喜びがあった

 祐輔が引退すると聞いて、率直に感じたのは「まだ13年だったんだ」ということと同時に「まだ早いんじゃないか」という思いでした。ですが……本人が決断したことですからね。

 祐輔が入団した2012年から僕が引退する2020年まで9年間一緒にプレーしましたが、やはり一緒に戦ってきたメンバーがユニホームを脱ぐことは寂しいですね。昨年からコーチとしてチームに復帰しましたが、祐輔と接するなかで選手時代とは変わらない感覚でコミュニケーションを取っていました。今考えてみると、もう少し立場的に祐輔に何かできることはなかったのかな、と考えてしまいます。

 今シーズン、彼はずっと二軍で練習に励んでいましたし、やはり若い投手たちも力をつけてきているなかで、ここ数年は登板数も減っていましたが、一軍に上がってきた時は、『どうや?』みたいな感じで、選手時代とそんなに変わらず会話をしました。今シーズン、一軍投手陣が夏場のしんどい時期に祐輔に先発を頼むことができたのは、彼が変わらず二軍で良い準備をしてくれていたからこそです。そういう、チームが大変な時こそ祐輔のような存在が大切となります。祐輔も諦めるような選手ではないので、やるべきことは、わかっていると思います。私は二軍での祐輔を見てはいなのですが、きっときちんと練習に取り組み、そういう姿を後輩に見せてくれていたんじゃないかと思っています。8月に二度先発登板がありましたが、ベンチから見ていても、ランナーを出しながらも粘り強く、自分の球種をフルに活用し、打者の意識を逸らすように投げていて『祐輔らしいな』と思っていました。

 思い返してみれば、祐輔とは数多くバッテリーを組ませてもらいました。最初は『良いチェンジアップを投げるな』という印象がありました。チェンジアップが良いと感じるということは、良いストレートを投げている、という証拠です。球速がある投手ではありませんでしたが、制球力があり、捕手としてプランが立てやすかったですね。ただ、その分こちらもプレッシャーがありましたし、僕は受けていて楽しかったし、リードのやり甲斐がありました。また祐輔は投手としては体が大きな方ではありません。良い時は体を目一杯に使って投げているのですが、良くない時は投球フォームがこじんまりしていました。ですので、日頃から「体を大きく使おう」という事をよく伝えていました。