気軽にサインに応じるなど、ファンサービスにも積極的に取り組んだ。

◆まだ何も成し遂げたわけではない

― 体力という意味では、代表との往復はきつくありませんか? 30日に大分で代表戦をして、3日後には新潟でリーグ戦、そしてその翌朝には広島にいるわけですが。

「移動をしてるときはやっぱりきついですね。もうとにかく早く広島に帰りたくて。昨日も夜遅く帰ってきたんですけど、やっぱり家がいいです。早くお好み焼きが食べたいし(笑)」

― 代表でのお話も少しお伺いしたいのですが。昨年末に、初めて代表に選出されたときの気持ちを改めて教えてください。

「ジーコ監督が『新たな選手は呼ばない』って言っていたから、厳しいとは思っていたんです。でも今回の招集は国内組だけという話を聞いて、昨年は日本人で一番点を取ったこともあって『これで呼ばれなかったらいつ呼ばれるんだろう』という気持ちもありました。だからまずホッとして、そのあとうれしいっていう気持ちが出てきましたね。自分の力で代表に入ったというよりも、広島で18点取れたことを一番評価して呼んでもらったと思うから、恵まれたなと思います。僕だけが取った点じゃなくて、コマ(駒野友一)からたくさんアシストしてもらったり、カズ(森﨑和幸)や(服部)公太さんとかも当然そうなので、みんなのおかげで選んでもらったかなって」

― 実際に代表でプレーをしてどんなことを感じましたか?

「今まではブラウン管とかメディアを通して代表の試合を見ていたので、日本を代表する選手が集まっている中に自分が入ってやるのは、すごく特別な感じでした。W杯の半年前っていう時期に呼ばれて、自分次第ではそこまでいけるんじゃないかなと思いました」

― 今年は代表での経験もあり、以前にも増して頼もしくなったように思います。ご自身で何か変わった部分はありますか?

「代表で1カ月くらい過ごして、自信がついたのは当然あります。周りも代表選手っていう目で見ると思うから、それに値する結果を残さなければいけないっていうのも良い刺激になっていますね。でも、僕の中では何も変わってないし、まだ何も成し遂げたわけではないんです。何とかまた次もチャンスがもらえるように、広島で結果を残さないといけないなって」

― 先ほど「何も成し遂げていない」というお話がありましたが、寿人選手にとって「成し遂げる」とはどういうことでしょうか?

「FWは点を取るっていうことがすごく明確で、結果がすぐに数字に表れます。だから1点取ったら満足っていうのもないし、1シーズンで20点取ったから満足っていうのもないんです。上を見たらきりがないポジションだから、サッカーを辞めるときに振り返ってみて、初めて良いサッカー人生が送れたなっていうふうにしたいですね。それまでたくさん点を取りたいと思います。あと個人的にはまだチームでのタイトルを獲ったことがないので、早くこのチームでタイトルを獲りたいですね」

(広島アスリートマガジン2006年5月号掲載・表記、所属等は当時のまま)