1990年にドミニカ共和国・カープアカデミーが開校してから、今年で35年目を迎えた。これまで数多くのプロ野球選手を輩出したカリブの育成施設はどんなところなのか?カープアカデミーのいまを知るべく、広島東洋カープ海外育成部の藤内裕夢(とうない・ひろむ)さんに話を聞いた。(全2回/第1回)

カープアカデミーでの練習風景。選手の入れ替わりの激しい、厳しい競争環境だという

◆約20名の選手が日々競争

 私が所属している海外育成部には、現在日本に5名、ドミニカ共和国駐在者2名の合計7名が所属しています。私は2024年5月にドミニカ共和国へ渡りましたが、これまで海外で働く経験はなく、旅行などでもこんなに長く滞在することはなかったので、最初は文化の違いや言語にも苦戦しました。ドミニカ共和国に行く前、日本で半年程度研修を受け、その期間には、学校にも通わせていただいたのですが、半年で身につけることはなかなか難しく、不安な中で業務に臨みました。ドミニカ共和国の気候は1年中暑いのですが、穏やかで、過ごしやすく、自然も豊かなので今はオープンな気持ちで毎日働くことができています。

 駐在員の仕事は、大きく分けて3つあります。

 1つ目は『野球業務』です。アカデミーには、練習生、契約選手を含め約20名が在籍しています。その選手たちのサポート、そして彼らは契約を経て日本に行くことになりますので、契約の手続き、道具の管理などの仕事です。

 2つ目は『施設管理業務』です。開校してから35年目になるので、少しずつ施設は老朽化しています。部分的な改修作業や、施設の維持管理を行っています。

 3つ目は『総務・経理業務』などです。その中で、現在私は野球業務、施設管理業務を現地で担当しています。また総勢40名ほどのドミニカ共和国出身の現地スタッフが、キッチンやランドリー、球場の維持管理などを担ってくれています。

 ドミニカ共和国の野球事情として、各地域に『プログラム』という、日本でいうクラブチームのようなチームが数多くあります。

 そこでは、多くの選手たちがメジャーリーグのチームと契約するために頑張っており、カープからも現地スカウトが各プログラムに足を運び視察を行っています。スカウトの推薦をコーチが動画などでチェックし、招待選手を決め、月に1回程度アカデミーでトライアウトを実施しています。その中から選ばれた数名が、アカデミーの練習生となります。

 現在フェリシアーノを含め、現地のコーチは4名います。また日本人コーチが半年間こちらで指導しますが、現在は元カープの選手でスコアラーを経た田中彰コーチが担当しています。選手の在籍人数は、特に制限はないのですが、やはり人数が増えすぎるとコーチが選手を指導しきれなくなるため、現在は20名前後を目安としています。ですから、入る選手がいれば、出ていく選手もいますので、その都度リリースしていくという形で入れ替わり、競争としてはとても激しいものになります。

 現地の選手たちのスケジュールは、午前9時頃から全体練習がスタートし、午後はコーチが選抜した選手を対象に2〜3時間程度練習をするという形で行なっております。メジャーのアカデミーがどれくらい練習をされているのかは分かりませんが、カープアカデミーは、練習量が多いチームであると感じている選手も多いそうです。カープアカデミーに入り、彼らが最終的に活躍しなければならないのは日本のプロ野球ですので、練習以外に、礼儀や規律なども日本に行ってからも困らないように指導を行なっています。

(後編へ続く)