2020年シーズンを持って現役引退を決断した佐藤寿人(ジェフユナイテッド千葉)。J1歴代2位のゴール数を記録した“ストライカー”は、かつてサンフレッチェ広島に12シーズン在籍。した。ここでは、『広島アスリートマガジン』誌上に掲載された数々のインタビューから厳選し、佐藤寿人のサッカー人生を本人の言葉と共に振り返っていく。

 今回は2年連続で日本人得点王に輝いた2006年のインタビューをピックアップ。2006年当時のサンフレッチェは中盤をフラットにする4-4-2のシステムが機能せず、開幕からクラブワーストとなるリーグ戦10戦未勝利を記録するなど低迷した。第8節終了後には小野剛監督が引責辞任。ただチームの根幹が大きく揺らぐ中でも、佐藤寿人は孤軍奮闘の活躍を見せていた。

 日本A代表にも選出されるなど、一躍全国区の選手へと上り詰めた佐藤の2006年シーズン開幕当初の声をお届けする。

チーム状態が上がらない中でも、ゴールを量産した佐藤寿人選手。

―チーム状態が良くないなか、ご自身は4得点と好調を維持していますね。

「そうですね。ただ勝利につながっていないので、それが一番悔しいです。やっぱり点を取って勝利を喜びたいですから。今年はまだ点を取って喜んで試合を終えたことがないから、早くそういう試合をしたいなっていうのはあります」

―寿人選手はボールのないところで本当に何度も動き直しをされています。それを繰り返すのは大変だと思いますが、続けられる秘訣はありますか?

「チームメートが良いボールを出してくれるのを信頼して動いていますから。1回動いただけでやめるより、何回か動いてその中で味方が良いタイミングを見つけて出してくれたらいいかなと思っているんです。だから常にそのタイミングを逃さないようにって。それは去年、広島に来てから学んだことなんですけど」

―広島に来てから、ということは今は昔よりも…。

「動くようになりましたね。動き直すことは多くなりました。僕の中では一番最初のタイミングで出してほしいっていうのはあるけど、ただ出し手からすれば出せない状況も当然あると思うので。だったらそのときに出せなくても、次のタイミングで出してもらえるように動こうっていうのを練習とか試合を通じながら感じました。それを心掛けるようになってからは、結構1個目よりも2個目、3個目と動いたときに良いボールが入ってくることもあるんです。逆に相手のDFにとっては、そういうことをされた方が、ずっと集中しないといけないから難しいかなって」

―裏を狙うスタイルは、いつ頃から得意とされているのですか?

「U-16の日本代表でそういうプレーをしていたとき、当時テクニカルスタッフだった剛さん(小野監督)が『ボールがないところの動きに良いものを持っている。それを武器に頑張れ』って声をかけてくれたんです。それが自分の中ですごく大きな自信になって、それからどうやったら相手の背後を取れるかとか、そういうことを考えるようになりましたね」

―誰か参考にした動きはありますか?

「あの頃は自分の中で、どうやったら相手のDFの視野から逃げられるかとか、そういうことを考えていたんですけど、1998年のW杯でバティストゥータ(アルゼンチン)のプルアウェイの動きがすごくうまくて実際にシュートも決めていたので、それを見て学んでいました」

―あれだけ動き直しをすると、体力的にも相当きついと思うのですが。

「そうですね。結構継続して動かなければいけないので、しんどいときはしんどいです。ただ、広島に来てからフィジカルコンディションはかなり上がっていると思うし、前線の守備をしながら前にも行けるようになったので、良い形になっているんじゃないかなと思います」