プロ野球選手にとって、グローブ、バットなどの用具は成績をも左右する重要な要素の一つ。それぞれの用具には十人十色のこだわりがあり、ミリ単位の調整を施す選手もいるという。まさに、試合を戦う選手にとっての『武器』と呼んでも過言ではないだろう。

 ここでは、かつてカープで『名手』と呼ばれ活躍した選手たちの、グローブ・バット・プロテクターへのこだわりを紹介する。

(『広島アスリートマガジン』2011年5月号掲載記事を再編集)

『孤高の天才』と呼ばれた前田智徳

 横浜時代にサードとショートで4度のゴールデン・グラブ賞を受賞した石井琢朗。不惑を迎えてもなおチームトップクラスの守備力を誇った内野手の武器のひとつが『グラブ』だ。

 石井の守備を支えるグラブはシーズンによって変わってはいたものの、形は横浜時代から大きく変えず、長年愛用しているものを継承していた。

 サードを中心にショートやセカンドでの出場にも備えていた石井は、ポジションによってグラブを変えてきた。内野手の中でもポケットは浅く、『当て捕りタイプ』のものを使用。内野の中で最も守備位置が深いショートでは、特にポケットが浅いものを用いて、球をつかむというよりも送球する右手にトスをするイメージだったという。

 一方で、ショートよりも速い打球が多く、さまざまな回転で打球が飛んでくるサードでは、しっかりと球をつかむことが求められるためポケットは深めに仕上げていた。

 『孤高の天才』と呼ばれた前田智徳は、刀とも言うべきバットにも強いこだわりを持っていた。

 長さ(33.5インチ)や重さ(約900グラム)は平均的なもので、形もオーソドックスである。ただ、素材は一般的なメイプルではなく、柔らかいホワイトアッシュを使用。素人には判別がつかないわずかな柔らかさが、バットとボールがくっつくような感覚を生み出すという。バットが折れやすいと言われるホワイトアッシュだが、バットを折ることは極めて少ない。当時はメーカーから月に10本が提供されていたが、その中から本人が選んだ1、2本を、芯の部分の消耗がない限り使い続けていた。

 またバットの色にもこだわりが。色によって塗装の成分が違ってくるのだが、『黒』が一番バットに球が食いつく感じがあるそうだ。そこにも、打撃の天才の独特なこだわりが垣間見える。

 『扇の要』と呼ばれる捕手に欠かせない武器と言えば、プロテクターだろう。

 現役時代、石原慶幸のプロテクターは従来のものよりも首周りが締まっており、鎖骨部分までカバーされていた。試合中にプロテクターを上げる動作があるが、完全防備であればどんなに投球が逸れても何の恐怖感もなく体をぶつけた。リーグでも屈指のブロッキングは、プロテクターがあってこそ発揮されてきたのだ。

 またレガースは、動きやすさに加え本塁に滑り込んでくる走者のスライディングをブロックするため、側面にも硬い素材を使用。ひざを守る部分にはクッションが入っており、ファールチップが上から当たってもカバーできるつくりになっていた。

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