独立リーグ出身の投手・行木俊。リーグ1年目の昨年はケガの影響から登板はなく、デビューは今年に入ってから。そしてわずか10試合の登板でカープスカウトの心を射止めた。短期間で劇的な成長を見せた右腕だけにプロ入り後の伸びしろにも期待がかかる。無限の可能性を秘める右腕、急成長の理由に迫った。

独立リーグ出身ながら、ドラフト指名当時は19歳とまだまだ伸び代を感じさせる行木俊投手。

◆わずかな期間で球速が大幅アップ! 可能性を感じさせる素材型投手

─ カープから指名された時は、どのような思いでしたか?

「調査書は届いていましたが、指名はないだろうと思っていたので、びっくりしたというのが正直なところです。おそらく監督もチームメートも同じ気持ちだったのではないでしょうか。ただ、個人的にはたとえ育成選手であってもプロに行きたいという思いがあったので、うれしさも大きかったです」

─ 投手を始めたのはいつからですか?

「本格的に始めたのは高校3年からなので、投手としては今年が3年目という感覚です。WBCで胴上げ投手にもなった大塚晶文さん(元近鉄など)が高校(横芝敬愛高)の先輩で、僕が高校3年のときに練習を教えに来てくださったことがありました。そこで体やグローブの使い方など、投球フォームについてアドバイスをいただき、それは今でも参考にさせてもらっています。大塚さんは目標にしている投手の1人です」

─ 独立リーグ初登板は今年6月。約半年の実戦で得たものを教えてください。

「5月の試合で投げた球のほとんどが130キロ台だったので、もっと球速を増さないとダメだと思い、体を大きくするために食トレを始め、ジムでトレーニングに励みました。また投球フォームを撮影し、気になる部分はすぐに修正するなど、出来ることをどんどん試しました。試行錯誤しながらもいろんなものを積み重ねたことで、シーズン後半には球速が150キロ近くまで出るようになりました。6月の時点ではこんなに成長できるとは思っていなかったので、自分でも驚いています」

─ アピールポイントを教えてください。

「闘争心を出して打者に向かっていくタイプなので、強気に攻めるピッチングを見てもらいたいですね。また、僕は実績のない選手。伸びしろの部分でとっていただいたと思っているので、いろいろな選手から話を聞き、たくさんのことを吸収していきたいと思っています。自信のある球はストレートと、今年新たに習得したスライダーです。7月から9月まで試合がなかったので、この約2カ月の間に必死にスライダーを習得し、チェンジアップも握りを変えたことで、試合で使える球になりました」

─ 徳島での2年間で学んだことは?

「心技体、全て成長できました。高校の頃と比べて体もかなり大きくなりましたし、投手としてのレベルも上がりました。また1年目は、ケガのため選手をサポートする側に回っていたことも今となっては貴重な経験です。今年は、支えてくれる裏方さんのためにもしっかり投げようとマウンドに上がっていました。そういう気持ちの在り方も含めて、人としても野球人としても成長できた2年間だったと思います」