誰が予想できたでしょうか? この快進撃っぷり。決して万全な体制で開幕したとは言えない状況の中で、若手選手が着実に実力をつけ、勝ち点をもぎ取り続けている状況は大したものだと思います。ゴールマウスを割らせない大迫選手の成長については先月号に書かせてもらいましたが、試合を重ねるごとにチーム全体の守備が確固たるものになってきています。特に敵チームからの縦パスが入ったときに対する『チャレンジ&カバー』がしっかりとできています。誰かが激しく当たりにいき、かわされたとしても、その次につく選手がすぐに現れてきます。まるでチームの守備の動きが鎖でつながれたように、固く連動しています。3月30日の大分戦(○1ー0)、4月6日のG大阪戦(○3ー0)はボール保持率こそ低かったかもしれませんが、安定した守備を武器にいずれも無失点試合でした。

 またG大阪戦で今季初の複数得点が生まれたというのも、今後に向けての好材料です。柏選手、そしてエミル選手のサイドからの攻撃は開幕から良い崩しができていますし、ここ数試合はしっかりと中でタメをつくった上で逆サイドで仕留めるという良い形が出てきています。特にG大阪戦で柏選手のゴールを生み出した野津田選手のスルーパスは彼の良い部分が出たプレーでした。彼自身まだ得点を挙げていませんが、あそこで冷静にパスを選択するという点に彼なりのアイデアを感じました。徐々に攻撃のパターンや、クオリティーが高くなってきているだけに、中央での崩しがもっと見られるようになれば、さらに攻撃力が上がってくるでしょう。

 また川辺選手の動きも開幕直後と比較すると格段に良くなってきたようです。彼が中盤で攻守にわたり献身的な働きを見せることで、チームの勢いは加速していきます。彼本来の良さは攻撃力ですが、守備の部分でもすごく気の利いたプレーを見せてくれています。攻守の切り替えの早さ、そして激しい当たりで研ぎ澄まされたプレーを見せてくれるようになってきました。


(広島アスリートマガジン2019年5月号から一部抜粋・続きは本誌にて掲載)


▼ 吉田安孝(よしだ やすたか)
1966年11月22日生。広島県出身。元サンフレッチェDF。現在は広島テレビ「進め! スポーツ元気丸」などのサッカーコメンテーターとして活躍中。