現役カープ選手がルーキー時代に抱いていた思いを振り返る本企画。今回取り上げるのは、貴重な先発左腕として期待がかかる、床田寛樹。ルーキーイヤー、順調な調整を重ね、新人ながら開幕ローテ入りの期待がかかっていた左腕は、どのような思いで開幕を迎えようとしていたのか。当時の言葉から、その胸中を紐解いていく。

2016年ドラフト3位で入団した床田寛樹投手。プロ1年目から開幕ローテに入ると、2戦目の巨人戦でプロ初勝利を挙げた。

◆中継ぎよりも先発として試合をつくるのが合っていると思います

 カープ待望の日本人先発左腕として期待を集めた床田寛樹。2017年の春季キャンプ、オープン戦と試合を重ねるごとに評価を上げ、開幕ローテをつかみつつあった。

「キャンプ当初はとにかくしんどかったです。ただ周囲の方々からの助けによって慣れてきた部分もあり、なんとか最後までケガなく完走できました。周囲とのレベルの違いは感じましたが、自分の投球をしっかりとすれば、ある程度、通用すると感じた部分もあります」

 初めてのキャンプでは「ケガをしないこと」をテーマに臨んだ。これまでの自分のスタイルを変えず、今の実力でプロの世界にぶつかってみる。そして、全力でトライするからこそ見えてきた課題を見つめ、それを解消するため、工夫を重ねた。

「大学では打ち取れることができていた球でもプロの世界ではファールで粘られているので、そこを克服したいと思っています。僕自身すごく速い球や、特徴のある変化球を持っているわけではないので、基本は低めへの制球と、球の質を良くしていくことが大事だと思います。新しい球種を覚えるよりも、まずは今ある球の質やキレを増すことができればと考えています」

 “理想の投手”としてイメージしたのは、DeNAで活躍する今永昇太。大学2年生の秋の神宮大会で見た左腕の姿を床田は追いかけてきた。

「今永さんの直球は、スピードがあるわけではないのに、バットに当たらないんです。そんな光景を見て『この人みたいに投げられればプロにいけるのかな』と思ったことがきっかけで、プロ野球選手を目指すようになりました。元々、球速にこだわりはなく、球の質を大切にしたいと思っていたところに、今永さんの投球を見て目標が明確になりました」

 床田がカープのユニフォームに袖を通す前年の2016年オフ、当時のチームは25年ぶりのリーグ優勝を果たしたチームから大黒柱の黒田博樹が引退し、先発の立て直しが急務とされていた。それだけに即戦力左腕にかかる期待は大きかった。

「前田健太投手(現ツインズ)のようなエースと呼ばれる存在になりたいです。自分は打たせて取るタイプなので、中継ぎよりも先発として試合をつくるのが合っていると思います。もちろん最初は与えられたところでしっかり結果を残した上で、先発のマウンドに上がることができれば良いなと思っています」

 首脳陣の期待通り、床田は開幕ローテに入ると、4月5日の中日戦(ナゴヤドーム)でプロ入り初登板・初先発。2回目の先発となる4月12日の巨人戦(東京ドーム)でプロ入り初勝利を挙げ、若返りをはかる投手陣に新たな風を吹かせる存在となった。