昨季限りで現役を引退し、今年からプロ野球解説者として活動している石原慶幸氏がカープの一軍キャンプを視察。扇の要として長年チームを統率し続けた男が、春季キャンプを徹底的に分析します。今回は元捕手目線から見た投手&捕手編をお届けします。

◆注目のルーキー3投手を首脳陣がどう判断するか

 

 それぞれ特徴が違う今キャンプ注目のルーキー3投手ですが、初めてのプロのキャンプでのブルペンを見る限り良い調整ができていると思います。大道温貴投手は投げっぷりが良く、なかでもストレートが魅力的で、森浦大輔投手はキレのあるストレートと変化球が印象的でした。

 そして栗林投手は、社会人の大会があったということで、肩を休ませながらのキャンプインになりましたが、ブルペンですごく良い感じで投げていたので、これからどんどん調子を上げていくのではないかと思っています。それぞれの起用法は、今の段階では分かりませんし、チーム事情も関係してくるでしょう。

 また、練習試合やオープン戦の打者の反応と、ペナントレースが始まってからの打者の反応は違うだけに、今の時期の結果だけを見て起用を決める難しさもあると思います。そこを佐々岡真司監督と投手コーチがどう判断していくか、楽しみに見守りたいと思います。

◆投手陣のキーマンとなる選手は!?

 

 チームの一番の課題と言えるリリーフ陣、特にセットアッパーとクローザー争いに関しては、まさにサバイバルと言えます。それだけに投手陣全員にチャンスがあると言ってもいいでしょう。

 注目選手を強いてあげるなら、ケムナ誠投手、塹江敦哉投手、島内颯太郎投手の3人でしょうか。このメンバーは、昨年一軍で“投げさせてもらった”立場であり、良い経験をさせてもらったと思います。

 今年は自分たちの力で居場所をつかみとりにいかないといけない存在です。昨季の経験が活かされていないようではダメだと思うので、そのあたりは自覚を持ってしっかり取り組んでいってほしいと思います。

 先発陣に目を移すと、昨年一年間、ローテーションを守った九里亜蓮投手が目立っていました。第1クールからブルペンで347球の投げ込みを行うなど、今季も先発としてシーズンを投げ抜くという気持ちが、球数になって表れたのではないかと思います。

 主力投手があれだけの球数を投げ込めば、若い選手もおおいに刺激になったはず。ブルペンは連日活気を帯びて、良い雰囲気でしたね。この九里投手に、大瀬良大地投手、森下暢仁投手を加えた“開幕投手争い”も注目したいポイントですね。

◆ポスト石原慶幸を担うのは誰だ⁉︎

 

 今季、成長が楽しみな存在は坂倉将吾選手です。プロ4年目の昨年は81試合に出場し、47試合でスタメンマスクを経験しました。

 また、新人王を獲得した森下投手と数多くバッテリーを組み、良い結果を残しました。昨季の貴重な経験を糧に、一軍では別格の存在と言える會澤翼選手にどこまで追いつくことができるかに注目したいです。キャンプ序盤にケガで離脱してしまったのは残念ですが、まずは開幕までにしっかり勝負できる状態に仕上げてほしいと思います。

 會澤選手、坂倉選手に続く存在として楽しみなのは、2年目の石原貴規選手です。昨年秋のフェニックス・リーグでは、課題の打撃で3本塁打を記録し、今キャンプでもフリーバッティングで本塁打を放つなど、打撃面でも良いアピールを続けていました。

 この石原貴規選手と中村奨成選手、途中から一軍キャンプに合流した磯村嘉孝選手の3人で、一軍枠を争っていく形になると思います。石原選手と中村選手は、まだ一軍での実績がなく年齢も若いので、持っている力をどう首脳陣に披露できるかが大事です。チャンスであることは間違いないので、もっと必死さを前面に出して、どんどんアピールしていってほしいですね。