3月26日、いよいよプロ野球が開幕する。コロナ禍の影響が色濃く残るなか、各球団が最大限の注意を払いながらここまで調整を続けてきた。はたして今季の栄冠を手にするのは、どのチームなのか。カープOBの大野豊氏が、カープの現在地を分析する。

右肘の手術明けながらオープン戦で圧巻の投球を見せた大瀬良大地投手。

◆1998年、42歳7カ月で開幕投手に

 いよいよプロ野球が開幕します。未だコロナ禍は続いていますが、無事にシーズンが進むことを期待したいですね。注目の開幕投手ですが、春季キャンプが終わった段階で佐々岡監督が大瀬良を指名しました。右肘の手術明けということで九里や森下の可能性もあったでしょうが、手術の影響を感じさせないほど仕上がりが良いだけに妥当な選択ではないかと思います。

 キャンプは二軍スタートでしたが調整も順調に進み、一軍合流後も良い球を投げていました。オープン戦を見ても、逆に調子が良すぎて心配なくらいです。そこまで大きな手術ではなかったと思いますが、これほど良い状態でシーズンに入ってくるとは当初は予想していませんでした。投手陣の軸として1年通して働いてもらわないと困る選手ですから、飛ばしすぎに注意しつつ、良い状態を開幕以降も持続してほしいですね。

 私も4度、開幕投手を経験させてもらいましたが、そのときに思ったことは「勝ち負けの結果は別にして、早く登板した方がいいな」ということです。もちろん開幕戦ということでプレッシャーもかかりますが、野手と違って、例えば5戦目、6戦目に投げる投手は、その日が開幕という感覚なんです。

 実際にチームが開幕を迎えて、勝ち負けの結果が出てくると、一人で登板日を待つというのは非常に苦しいものがありました。仮にチームが開幕から連勝していたとしたら、それはそれで「自分が連勝を止めたら……」というプレッシャーも出てきますしね。そういう意味では一日でも早く登板した方が、結果は別として、変に考えて悩まなくていいなという気持ちはありましたね。

 余談ですが1998年の開幕戦は、42歳だったこともあり、当時の三村監督には「僕が開幕投手をやるようでは優勝できません」と伝えました。1年間、先発ローテを守れるか分からない投手に開幕を任せるのは、チームとしても良いことではありませんから。ただそれでも「お前しかいない」ということで最後は了承しましたけどね。

 話を戻しましょう。3年連続で開幕投手を務める大瀬良には佐々岡監督の期待を意気に感じて、年間を通じてしっかり投げ切って、その上で勝ち星を積み重ねていってほしいですね。開幕投手というのはプロ野球界で、たった12人しか経験することができない特別なものです。そのうちの一人に選ばれたという責任を持って、大瀬良には自分のため、チームのため、ファンのためにも良いスタートを切ってほしいと思います。