スポーツジャーナリストの二宮清純が、ホットなスポーツの話題やプロ野球レジェンドの歴史などを絡め、独特の切り口で今のカープを伝えていく「二宮清純の追球カープ」。広島アスリートマガジンアプリ内にて公開していたコラムをWEBサイト上でも公開スタート!

 交流戦で9つも借金を増やしたカープは、6月17日現在、首位から16.5ゲーム差の最下位だ。開幕前、広島護国神社での必勝祈願で「優勝を目指して頑張りたい」と誓った佐々岡真司監督だが、ペナントレースの約半分が終わった時点での16.5ゲーム差である。これをひっくり返すのは容易ではない。

 常識的に考えれば、優勝の可能性があるのは首位・阪神から7ゲーム差の巨人、東京ヤクルトまでだろう。

 夢と現実は違う。「優勝を目指して頑張りたい」という気持ちを佐々岡監督が持ち続けるのは結構だが、ここから先はAクラス狙いに切り替えるべきだ。これとて容易なことではないが、戦い方次第では、まだ何とかなる。

 コロナ禍により、セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)がなかった昨シーズンと違い、今季は2年ぶりにCSが行われる。現在Bクラスの球団にとって、これは励みになる。

『失敗の本質』(ダイヤモンド社)という本がある。先の戦争で日本軍が敗れた原因を追究し、失敗の本質に迫る名著だが、ぜひ佐々岡監督には読んでもらいたい。

 敢えて言うなら、戦いにおいてリーダーが戒めなければならないのは、次の3つである。①根拠なき楽観主義②目標の不明確化③戦力の遂次投入――。

 どれも重要だが、今のカープにおいて②はとりわけ重要である。苦難の折だけに、リーダーは目標を明確にしなければならない。当初立てた目標が達成困難なら再設定すべきだ。すなわちここから先、何を目指すのか。そこが不明確では、選手たちのモチベーションは上向かない。同時に、後半戦はこういう戦い方をする、というファンへのメッセージも必要である。不作為が一番よくない。

(広島アスリートアプリにて2021年6月21日掲載)

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二宮清純(にのみや せいじゅん)
1960年、愛媛県生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク 統括マネージャー。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。『広島カープ 最強のベストナイン』(光文社新書)などプロ野球に関する著書多数。ウェブマガジン「SPORTS COMMUNICATIONS」も主宰する。