6月に入っても苦戦が続くカープ。ここではカープOBの大野豊氏がカープ投手陣の課題を分析。チーム状況に独自目線で迫っていく。

先発・リリーフとフル回転の活躍をみせるドラ3右腕の大道温貴投手。

◆先発は森下の安定感が光る。玉村、大道の将来にも期待

 2年ぶりの交流戦は、主力選手に新型コロナウイルスの陽性判定者、濃厚接触者が出たことで非常に苦しい戦いを強いられました。投手陣にそれが顕著に表れたのが5月28日からのロッテとの3連戦(ZOZOマリン)です。

 この3連戦で先発マウンドを任されたのは、今季初登板の5年目の矢崎拓也と新外国人のネバラスカス。そして2年目の玉村昇悟という未知数の先発陣となり、矢崎とネバラスカスは5回を投げ切ることができずに降板。リリーフ陣に負担を強いてしまいました。

 このロッテ戦のように、交流戦18試合のうち、半分にあたる9試合は先発投手が5回までに降板しています。序盤に得点を奪われすぎると、いくら打線が得点を奪っても後手後手の展開となるため、試合のリズムをつかむことができません。

 チームとして勢いをつけるには先発投手に勝ち星がつく戦いをしていかないといけないですし、先発投手も約1週間程度は調整の時間があるので、最低でも6回までは投げる気持ちでいてくれないと困ります。これまで何度も言っていますが、9回までにリードを奪い、いかに守護神・栗林良吏につなげることができるかが、カープの勝利の条件になってくると思います。

 ただ先発が役割を果たすと締まった試合展開になります。その中で目立ったのは森下暢仁です。約3週間ぶりに登板した6月5日の楽天戦(マツダスタジアム)は、8年ぶりにNPBに復帰した田中将大との投げ合いとなりました。

 新型コロナウイルスの濃厚接触者と判定されたことで、調整が大変だったと思いますが、久々の登板にもかかわらず、先発投手のお手本となるような粘り強い投球をみせてくれたと思います。カープが2点リードの7回、無死から連続四球を与えて降板。そこから楽天の流れになったのを考えると、あの2つの四球がもったいなかったと思いますが、昨年まで大リーグで活躍していた田中に引けをとらない、堂々と渡り合う投球は素晴らしかったですね。

 また、6月10日のソフトバンク戦(PayPayドーム)では玉村が6回3安打無失点、6月11日のオリックス戦(京セラドーム大阪)では、ルーキーの大道温貴が5回無安打無失点。2投手ともに残念ながら勝ち星はつきませんでしたが、若い投手が先発として結果を残してくれました。

 特に大道は開幕からリリーフとして投げてきており、先発するのは大学時代以来。それでノーヒットピッチングですからたいしたものです。東京五輪のための中断期間まで連戦が続くだけに、玉村も大道もこのまま先発ローテに定着してもらいたいところです。そしてこれも繰り返し言っていますが、先発投手にとって白星は最高の良薬。それだけに、好投した試合は、なるべく勝ち星をつけてやりたいですね。