本日始まった東京五輪の野球競技。オープニングゲームで、日本はドミニカ共和国と対戦し、劇的なサヨナラ勝利を飾り、悲願の金メダル獲得に向けて、幸先の良いスタートを切った。ここでは、コーチとして五輪を2度経験した、カープOBの大野豊氏に、世界一を目指す戦い方について聞いた。

アテネ五輪、北京五輪で投手コーチを務めた大野豊氏。

◆選手の能力を最大限発揮させるためにも投手起用のシミュレーションが大切

 2004年のアテネ五輪も2008年の北京五輪も、決勝まで最大で何試合やるのかが分かっていたため、投手陣の起用は、決勝までを考えたうえで登板スケジュールを組んでいました。ただ、今回の東京五輪は、これまでにない大会形式のため、決勝まで何試合やるのかが日程が進んでいかないと分かりません。

 グループステージを1位で突破すると金メダルまで最短で5試合。そうでなければ最大で8試合行うことになります。現時点ではどうなるか分からないこの3試合の差が、選手を預かる侍ジャパンの監督・コーチからすると、頭を悩ますポイントになるでしょうね。

 五輪は総力戦ですから、ペナントレースでは先発として投げていた投手が、リリーフとして登板するケースもあります。選手の能力を最大限発揮させるためにも、どんな場面で投げるかがある程度分かるように、投手コーチは、起用方法を何通りもシミュレーションして、準備しておくことが大切です。

 また、国際試合は、ペナントレースとは違い、予期せぬことが起こるものです。相手チームがどんな野球をしてくるか分からないだけに、何があっても慌てないこと。冷静に対処していくことが求められます。一つ例を挙げると審判の判定。国際試合ならではのストライクゾーンに戸惑うこともあるはずです。仮に戸惑いを覚えたとしても、そこは冷静に受け止めて、バッテリー間でコミュニケーションをとり、その判定を逆手にとりながら攻めていく賢さも必要です。

 もう一つは、スコアラーのデータの活用の仕方。もちろんデータは大事ですが、投手にしても打者にしても、初めて対戦する選手が多いだけに、その場その場での適応力も大切です。国際大会を何度も経験した選手は、その引き出しが多いだけに、稲葉監督も、経験豊富な選手を数多く選んだのではないかと思います。

 勢いをつけるには、ドミニカ共和国との初戦のように、劣勢になった試合をいかに勝ち切れるか。試合中盤で負けていたとしても、それをいかに盛り返せるか。そのためには、チームとしての結束を高めていかないといけません。代表経験のある選手は、その役割も担ってくれるはずです。

 久しぶりの野球競技。自国開催でもありますし、野球というスポーツの未来を考えるうえでも、なんとか金メダルを獲得してもらいたいですね。