◆進学校の野球部ならではの練習で確かな成長を実感!

 実際に野球部でプレーする選手の声を聞くと、“練習50分”をポジティブに捉え、練習も勉強も効率良く行うために自らが考える力をつけ、“やらされるのではなく自分からやる”という意識が感じられた。

「もともとオープンスクールで武田高を知り、野球部もやっていることが他と全然違って練習も50分だし、メニューもいろいろあって。岡嵜先生の話も聞いて面白いなと思って選びました。他ではこんなに体ができなかったと思います。正直練習はもっとしたいと思いますが、逆にやりたいことも頭に浮かんできて、練習をプランニングしたりしています」

 2021年夏、主将としてチームのまとめ役を務めた道下黎哉君(3年)は武田高野球部が展開する独特の練習方法の効果をそのように実感している。

 岡嵜監督と山本部長のコンビは、共に野球部を率いて6年目となるが、練習メニューは基本的に岡嵜監督が考え、山本部長に相談した上で進めている。「今でこそコーチが数人いますが、当時は2人で60人ほどの部員を見ていました。(監督から)毎年ユニークなアイデアが出るので面白いですよ」と山本部長が口にするように、練習内容は常に試行錯誤している。

 中でも特徴的な取り組みの一つが、監督以下コーチ陣と部員が音声データを交換するという独特のコミュニケーション方法だ。

「練習が終わった後にスタッフミーティングを行うのですが、それを録音するんです。そしてその音声データを生徒に送って聞いてもらい、逆に生徒からも考えを音声データにして送ってもらうんです」(山本部長)

 岡嵜監督と山本部長は車での通勤時に部員からの音声を聞き、部員たちは練習後に監督たちからの言葉を音声で聞く。もちろん普段の練習でもコミュニケーションを図っているが、これも練習時間効率化の一つ。岡嵜監督に聞けば、導入前とは違うアプローチで声かけができるようになったという。

 さまざまな練習方法を試みて文武両道を展開し、高校野球界に新風を吹き込む武田高野球部。今後はどのような練習方法が生まれるのか? 注目したい。