2021年夏の高校野球広島大会は全90校・86チームが熱い戦いを繰り広げた。広島県内の球児、彼らを支える全ての人々は、それぞれの状況の中で必死に野球に取り組んできた。ここでは「広島県高校野球ダイジェスト」編集部が注目した“3つの高校のストーリー”をお届けする。第2回は、進学校として知られる武田野球部の取り組みに迫る。

ウエートトレーニングに励む武田高校野球部の様子

 広島県東広島市の山あいに位置する武田高は、県内でも有数の進学校として知られる。野球部創設は2007年と歴史は浅い。2015年に岡嵜雄介監督が就任以来、効率を重視したさまざまな練習方法を取り入れており、注目を浴びている高校だ。

 2019年には谷岡楓太投手がオリックスから育成ドラフト2位で指名され、同校初のプロ野球選手を輩出。2020年夏の独自大会ではベスト4に進出した。注目された今夏大会は、3回戦で決勝進出を果たした祇園北に敗れたものの、着実に力をつけている。

「基本的に平日授業は7時間目まで行われるため練習開始は17時頃で、17時45分には部活を終えなければいけません」

 岡嵜監督と共に野球部強化に尽力する山本寛部長がそう語るように、100人近くいる野球部員のほとんどが学校の敷地内にある寮で生活し、寮の食事は18時から。その後19時から2時間、全部員揃っての勉強時間が設けられており、必然的に練習時間は50分程度となる。しかも練習グラウンドは他のクラブとの併用のため、広さはほぼ内野のみだ。

  50分という短い練習時間、グラウンド環境について岡嵜雄介監督はこう話す。

「長くできるならやりたいです(苦笑)。ですが、“与えられたものの中でどうするか?”ということなんです」

 2015年の監督就任時から、この状況を踏まえたアイデアを出し続け、ユニークな練習を展開してきた。積極的にウエートトレーニングを取り入れ、科学的目線からフィジカル面を強化する取り組みはメディアからも注目されている。練習の雰囲気は和気あいあいとしており、一般的に想像される高校野球のイメージとは全く違う環境の中で部員は汗を流している。