若手が躍動する今季のカープ。中でも特に輝きを放っているのがプロ5年目・23歳の若武者・坂倉将吾だろう。

 9月13日現在、捕手スタメンはチームトップの78試合を記録。打っては交流戦から鈴木誠也の後を打つ5番に定着しており、持ち前の高い打撃力を発揮して打率.317は堂々のセ・リーグ2位を誇る。

 今季大きく飛躍を遂げようとしている坂倉は、どのような考えで成長を遂げてきたのか。ここでは、坂倉プロ入り後の軌跡を「広島アスリートマガジン」で過去に掲載した記事を元に改めて振り返る。今回は2017年のルーキーイヤーを終えた直後に行ったインタビューをお送りする。(広島アスリートマガジン2017年12月号掲載)

プロ1年目、二軍でリーグ2位の打率.298を記録。打撃力はプロ入り当初から評価されていた。

◆ファーム日本選手権で値千金の3ラン

─プロ野球選手としての1年が終わりましたが、どんな年でしたか?

「自分の良い部分も悪い部分も、全てではありませんが出て、その中で新しい課題も出てきた1年だったと思います」

─1年目から二軍での試合出場を重ねましたが、坂倉選手が試合に出場する中で最も意識していたことは何ですか?

「とにかくケガをせずに1年間どうやって戦っていくかという部分を意識していました。結果的にケガをせずにシーズンを戦うことができた点は、自分でも評価したいと思います。また他にも、自分がどういう状態になったら打撃の調子が落ちるのかといった点が、少しずつ分かるようになったことも自分の中で手応えを得ています」

─自分の課題や、足りていなかった部分は何だと思いますか?

「捕手としての全てです。キャッチング、スローイング、ゲームメイク、リード、それら全てで力のなさを痛感しました」

─捕手としてのプレーについて、春先と今を比較して成長を感じる部分はありますか?

「なかなか自分で判断がつけにくい部分ですが、少しは視野が広がったのかなとは思います。春先はただ闇雲にサインを出していましたが、今はある程度試合の雰囲気や相手打者のことを考え、理由があっての配球を行えるようになっています」

─10月7日のファーム日本選手権では、ルーキーの高橋昂也投手とバッテリーを組まれました。坂倉選手から見て、高橋投手はどんな方ですか?

「マウンドだと人が変わります(笑)。喋っている時は、のほほんとして、静かなんですが、マウンドでは吠えたりしていますし、得点圏に走者がいくと明らかに目が変わります」

─坂倉選手ご自身は、試合中は常に落ち着かれているイメージですが、立ち居振る舞いなどは意識する部分はあるのでしょうか?

「投手に対して不安感を与えないように意識をしています。捕手は一番周囲から見られるポジションだと思いますし、ミスをしても表情に出さないようにしています。投手を乗せたい時には敢えてガッツポーズをしたり、笑顔を見せたりすることもあります。冷静沈着そうに見えるかもしれませんが、グラウンドでは頭をフル回転させてますよ(笑)。打撃で結果を出せず、心が煮えたぎるほど荒れていても、なるべく表情に出さないようにしています(苦笑)」

─また10月7日のファーム日本選手権では7回に試合を決める3ランを放ちました。あの打席では本塁打を狙っていたのでしょうか?

「いえ、左投手ということもあり、逆方向の左中間に設定をしていたんです。僕もあんな結果になるとは思っていませんでした。ただ僕の中で右投手だとゲッツーを打つイメージがあったので、『やだなー』と思いながら打席に入ったら、投手が変わったので、良い精神状態に持っていくことができました。昔から勝負が決まるような場面には縁がなくて、MVPなどの表彰とも無縁だったんですけどね。実は今年祖父が亡くなったのですが、もしかしたらその祖父が打たせてくれたのかなと思いました。終盤で試合を決める一打は滅多に打てなかったので、祖父に本当に感謝しています」